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管理規約の重要ポイントと改正手順

はじめに

マンションの管理組合が円滑に運営されるためには、管理規約がルールの基盤となります。マンション購入者(区分所有者)は、管理規約に従って共同生活を営むこととなり、理事会や総会の運営、共有部分の使用方法など、多岐にわたる事項が定められます。一方、時代の変化や建物の老朽化、新たな設備導入などに伴い、管理規約を柔軟に改正する必要が出てくる場合も多いといえます。

本稿では、マンション管理規約の基本的な役割や見直しの重要性、改正時の手順や注意点を解説し、管理組合や区分所有者がスムーズに合意形成を行うための指針を示します。

Q&A

Q1.管理規約はどのような法的根拠を持っているのですか?

マンションの管理規約は、区分所有法第30条に基づき、区分所有者の間で定める共同生活のルールを規定したものです。一般的には、管理組合の成立や組合員の権利義務、理事会・総会運営の方法、共有部分の使用制限、管理費や修繕積立金などが規定されます。

Q2.管理規約を改正するメリットは何でしょうか?

主に以下のメリットがあります。

  1. 時代や環境の変化に対応
    建物の老朽化や防災対策の強化、ITの普及など、マンションを取り巻く環境は絶えず変わる。管理規約を最新事情に合わせることで問題を先取りして解決しやすい。
  2. トラブル予防
    曖昧な規定を明確化し、区分所有者間の解釈違いを減らすことで、紛争や係争を未然に防ぐ。
  3. 管理組合のガバナンス強化
    理事会・総会の運営方法を明文化し、迅速かつ民主的な意思決定を支援する。
Q3.管理規約を改正するには、どのような手順が必要ですか?

代表的な流れとしては、

  1. 理事会や専門委員会で改正案を作成
  2. 総会に改正案を上程・説明
  3. 区分所有者の決議(通常、特別決議が必要)
  4. 改正内容の周知(議事録配布、掲示板など)
  5. 管理規約書を更新

区分所有法第31条では、管理規約の設定・変更・廃止は原則特別決議(区分所有者および議決権のそれぞれ4分の3以上の同意)が必要とされます。

Q4.特別決議が取れない場合、改正は不可能ですか?

はい、原則として管理規約の改正には区分所有法で定められた特別決議を経る必要があります。単純多数決では足りず、高いハードルを設けることで規約の安定性を保っています。ただし、共用部分の一部使用など例外的に普通決議でよい場合もありますので、改正内容に応じて要件を再確認しましょう。

Q5.弁護士に依頼するメリットは何でしょうか?

管理規約の改正は法的要件や区分所有法との整合性が不可欠です。弁護士の関与によって、

  1. 法令や判例に照らしたドラフト作成
    差別的・違法な条項が紛れ込むのを防ぎ、将来の紛争を予防。
  2. 総会での説明サポート
    区分所有者が納得しやすいよう、改正意図やメリット・デメリットを弁護士が分かりやすく説明支援。
  3. 紛争時の交渉・調停対応
    規約改正の賛否で対立が激化した場合、弁護士が和解案や修正案を提案し、合意形成を促す。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の多経験
    マンション管理に関するトラブルを解決し、実務上のノウハウを蓄積している。

解説

管理規約の重要性

  1. マンション運営の基盤
    • 区分所有者が共同で暮らすうえでのルールブック
    • 理事会の権限や総会の議決事項、管理費や修繕積立金の算出基準、専有部分・共有部分の範囲などを明確化。
  2. トラブル解決の拠り所
    • 住戸間の騒音、ペット飼育、リフォームなど揉め事が起きたとき、まず管理規約が参照される。
    • 曖昧・古い規約だと解釈が割れて紛争が長期化しやすい。
  3. 区分所有法との関係
    • 区分所有法は強行法規的な規定も含む。管理規約で法令に違反する定めを置いても無効となる。

管理規約改正の具体例

  1. IT活用・オンライン総会対応
    • コロナ禍や時代の変化で、総会をオンライン開催するニーズが増加。
    • 規約に「オンライン参加・議決行使」に関する条文を追加しないと、法的に効力が曖昧になる恐れ。
  2. ペット飼育やリフォーム条件
    • ペット飼育可に変更する場合、詳細(体重制限、鳴き声対策、共用部の使用制限など)を定める必要。
    • リフォーム・リノベーション時の承認フローを明文化し、施工時間や騒音対策などガイドラインを設定。
  3. 防犯・防災対策
    • 防犯カメラ設置費用や維持費の負担方法、映像管理ルールを規約に落とし込む。
    • 大規模災害に備えた緊急時の理事会権限や連絡方法を追加する。

改正時の手続き上の注意

  1. 案の作成と理事会承認
    • 理事会または専門委員会が改正案を立案し、弁護士や管理会社など外部専門家のチェックを受けるとスムーズ。
  2. 総会招集と議案提案
    • 改正案の概要を招集通知に添付し、区分所有者に周知。賛否判断しやすいよう、背景説明やメリット・デメリットを記載する。
  3. 特別決議の成立
    • 区分所有法第31条により、管理規約の設定・変更・廃止は原則として出席者の4分の3以上、かつ区分所有者総数の4分の3以上の賛成が必要。
    • 議決後、議事録に改正可決を明記し、全員に配布。
  4. 施行と周知
    • 改正管理規約を全区分所有者に周知(電子版や管理組合HP、配布冊子など)。
    • 改正内容を知らず違反行為が起きないよう、掲示板などに要点を表示するのも有効。

弁護士に相談するメリット

  1. 法的リスクのチェック
    • 改正した条項が区分所有法や建築基準法などの法令に違反しないか、弁護士が確認。
    • 無効な規定を定めると、後々の紛争で“そもそも規約が無効”と争われる恐れ。
  2. 住民との合意形成サポート
    • 改正内容に反対する区分所有者がいる場合、弁護士が第三者の立場で説明会や理事会に同席し、法的根拠や想定されるメリットを伝えることで反対意見を吸収しやすい。
  3. 紛争解決への対応
    • 仮に改正の正当性を巡って訴訟が起きた場合も、弁護士が代理人となり、管理組合の法的防御を行う。
    • 反対勢力との間で調停・和解交渉を行い、タイムロスやコストを最小化。

まとめ

マンションの管理規約は静的ではなく、建物のライフサイクルや社会の流れに合わせて随時アップデートしていくことが望ましいと言えます。専門家の協力を得ながら、合理的かつ合法的な管理規約改正を進めることで、マンションコミュニティ全体の安心・安全を高めることができます。


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