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役員・代表者が備える再生計画のポイントを解説

はじめに

会社が倒産(破産)しても、代表者や役員の人生は続きます。破産手続を完了し、免責を得た後でも、多額の借金や背任行為が疑われる訴訟リスクを抱えていなければ、新たな事業や就職など再スタートを切ることが十分に可能です。むしろ、倒産を経験したからこそ得た知見や失敗経験を糧に、さらなる成功を収める経営者も存在します。

本記事では、役員・代表者が破産後に備えるための再生計画に注目し、どのように意識改革や資金面の準備、信用回復を進めればよいのかを解説します。破産はゴールではなく、新たなチャレンジのスタートライン。適切な計画とサポートがあれば、再生は実現可能です。

Q&A

Q1. 破産後の経営者や役員には、職業上どんな制限がありますか?

破産手続中(免責確定前)には、弁護士や司法書士、税理士など特定の資格や職業で就業が制限される場合があります。ただし、免責確定後(復権)であれば、会社役員や取締役への就任も含めて法的制限はほとんど解除されます(旧商法にあった破産者の取締役就任制限は撤廃)。

Q2. 新規事業を始める際の資金調達はどうすればいいでしょうか?

金融機関からの融資は破産歴が影響して非常に難しくなる場合が多いです。代替として、自己資金の蓄積やエンジェル投資家・ベンチャーキャピタルからの出資、あるいはクラウドファンディングなどを活用する事例も増えています。周囲の理解や信頼を得られれば、少額からでも事業を始める方法はあります。

Q3. 破産後、家族や親戚が名義上の代表を務める形で起業するのはどうですか?

名義上別の人が代表でも、実質的に破産者本人が経営していると、後に「名義貸し」として問題になるリスクがあります。金融機関や取引先、裁判所から不正行為と疑われる可能性もあるため、正々堂々と自ら代表に就任し、信用を積み重ねていく方法が望ましいです。

Q4. 破産した経験を公にする必要はありますか?

必要以上に公表する義務はありませんが、事業パートナーや出資者から経歴の開示を求められた際に偽るのはリスクがあります。過去の失敗原因をどのように克服しようとしているか、ポジティブなメッセージとして伝えることで逆に信頼を得られる場合もあります。

Q5. 再生計画を立てる際、具体的に何から始めればよいですか?

まずは現時点の財務状況信用情報を正確に把握し、自己資金の調達方法事業計画を明確にする必要があります。事業アイデアやマーケット分析はもちろん、弁護士や会計士、コンサルタントなどの専門家と連携しながら、実行可能なプランを形にしていくのが一般的です。

解説

破産後の役員・代表者が直面する課題

  1. 信用面でのハンデ
    倒産・破産歴があると、銀行からの融資はもちろん、取引先や投資家の信用を得るまでに時間がかかります。過去の失敗理由を説明し、再発防止策や具体的な改善点を示すことで、徐々に信用を回復することが重要です。
  2. 免責不許可事由の影響
    もし背任や不正行為が認定された場合、個人破産で免責が得られず多額の債務が残る可能性があります。そうなると、再起はさらに困難となるため、破産手続時に不正行為疑いを回避することが何より大切です。
  3. 生活費や家族への影響
    破産直後は所得源が途絶えがちで、再就職や起業準備の間に生活費を工面する必要があります。家族や親戚への負担、あるいは自身がパートやアルバイトをしながら再起を目指す選択肢も検討することになります。

再生計画立案のステップ

  1. 失敗原因の徹底分析
    過去の倒産原因(資金繰り、売上不振、経営判断ミス、不正など)を自ら洗い出し、同じ過ちを繰り返さないリスク管理策をまとめます。客観的な視点を得るためにも第三者の意見を積極的に取り入れることが大切です。
  2. ビジネスプランの策定
    新規事業を起こす場合は、市場調査・競合分析、売上見込みやコスト試算などを含む事業計画書を作成します。単なるアイデアレベルでなく、数値的根拠やリスクシナリオを明示することで、出資者やパートナーを納得させやすくなります。
  3. 資金調達方法の選択
    • 自己資金:過去の倒産で失った資産が多いなら難しい面も
    • エクイティファイナンス(出資):出資者と利益を共有する形での調達
    • クラウドファンディング:インターネットを介して広く資金を募る
    • 助成金・補助金:自治体や政府の創業支援施策を活用
    • 投資家ネットワーク:天使投資家やVCなど
  4. 人脈と信用構築
    倒産後に再起するためには、過去の知人や顧客、業界人脈をどう活用するかが大切です。失敗を謙虚に反省しつつ再スタートの意欲を示すことで、支援者が現れる可能性があります。

起業以外の再生オプション

  1. 再就職・転職
    大企業の管理職や高難度資格の職種でなければ、破産歴が直接問題になるケースは必ずしも多くありません。専門スキルを活かす形で再就職し、収入を安定させてから将来的な起業を狙う戦略も有効です。
  2. 共同経営者・顧問として参画
    破産歴が気になる場合、新しい会社を自ら立ち上げるのではなく、共同経営者顧問として参画する選択肢もあります。過去の経営経験を活かしつつ、代表ではない立場で企業を支援することで、徐々に信用を回復する方法です。
  3. 家業・後継者支援
    家族が営んでいる別の事業や後継者不足の中小企業に入り込み、事業承継の一環として経営に携わる道も考えられます。公的な事業引き継ぎ支援センターを活用する例もあり、破産歴があっても能力次第で受け入れ先が見つかるかもしれません。

弁護士に相談するメリット

  1. 免責確定までのサポート
    破産手続で免責不許可事由を回避し、確実に免責を取得するには弁護士の適切な対応が不可欠。免責が得られれば、負債の重荷から解放され、新規事業や転職に本腰を入れられます。
  2. 再生計画の法的リスク管理
    新たに起業する際、借入・出資契約取引契約で法的リスクを把握しないと、再度の失敗が怖いところ。弁護士が契約書チェックやリスク分析を行うことで、安全なスタートを切りやすくなります。
  3. 不正行為疑いの除外
    倒産後に起業するとき、「資産を隠したのでは?」「昔の債務を継承させていないか?」など疑念を持たれるケースがあります。弁護士が手続きを監修すれば、背任行為や詐害行為と疑われないよう正当性を示しやすいです。
  4. 各種専門家との連携
    弁護士は、税理士・会計士・コンサルタントなど多彩な専門家ネットワークを持っている場合が多く、再生計画を総合的にサポートしてもらえます。資金調達ルートや補助金情報なども得られる可能性が高まります。

まとめ

役員・代表者が破産後に備えるための再生計画は、倒産を経験した経営者にとって次なる一歩を踏み出すための設計図です。

倒産は、あくまで事業の終了であり、経営者個人の人生すべてを否定するものではありません。弁護士などの専門家と連携し、破産後の戦略的な再生計画を立てることで、セカンドチャンスを活かす可能性は広がるでしょう。


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