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会社倒産で役員は責任を追及されるの?会社法・破産法から見る役員責任の基本とリスク対策

はじめに

企業が倒産(破産)となった場合、代表取締役をはじめとする役員がどのような責任を負うのかは非常に重要なテーマです。中小企業では「会社=代表者個人」という実態が多いものの、法律上は会社と個人は別人格。しかし、会社法や破産法には役員責任を追及する規定が存在し、不誠実な経営や不正行為に対しては厳しく対応されるケースがあります。

本記事では、会社法上・破産法上の役員責任の基本的な考え方を整理し、倒産手続の局面でどのように責任が問われるかを解説します。経営者や役員の方が、いざというときに慌てないようご確認ください。

Q&A

Q1. 会社法では役員にどのような責任を課しているのですか?

会社法では、役員(取締役・監査役など)に善管注意義務忠実義務が課されており、これらに違反して会社に損害を与えた場合、損害賠償責任を負う可能性があります。特に倒産時には、不正行為重大な過失があると追及が厳しくなることがあります。

Q2. 破産法上の役員責任とはどういうものですか?

破産法自体に「役員責任」という明確な規定はありませんが、破産手続で明るみに出た背任行為・不正行為(資産隠しや偏頗弁済など)について、代表者や役員が法的責任を問われることがあります。結果的に免責不許可事由が認められ、代表者個人が多額の負債を背負い続けるケースもあります。

Q3. 中小企業の役員が負う責任は大企業とどう違うのでしょうか?

法律上は基本的に同じですが、中小企業の場合、代表取締役がほぼ全ての意思決定を行うことが多く、責任追及が集中しやすいです。また、連帯保証や個人資産との混同も起きやすいので、実際のリスクは大企業の役員よりも高いと言えるでしょう。

Q4. 不正行為で役員責任を問われると、どんなペナルティがあるのですか?

会社法上の損害賠償責任を負わされるほか、破産手続では背任行為や詐欺行為が認定されると刑事告発も行われる可能性があります。さらに、代表者個人が破産しても、免責が認められない(免責不許可)ケースもあります。

Q5. 役員を辞任すれば責任を免れることはできますか?

原則として、過去の行為による責任は辞任しても消えません。辞任は将来の責任(義務)を負わなくする効果はありますが、在任中の不正行為や過失から生じる責任追及は存続します。

解説

会社法上の役員責任の基礎

  1. 善管注意義務
    役員は、会社の業務を行うにあたり、善良なる管理者の注意をもって職務を遂行する義務があります。経営判断ミスが重大な過失に当たる場合、会社や第三者から損害賠償を請求される可能性があります。
  2. 忠実義務(会社法355条)
    役員は、会社の利益のために誠実に行動しなければなりません。自己の利益を優先した取引や、会社に損害を与えるような行為(背任行為)を行うと、責任追及の対象となります。
  3. 役員の損害賠償責任
    会社が倒産し、管財人や債権者が「役員が不正を行い会社に損害を与えた」と主張する場合、役員は個人資産を使って賠償しなければならない可能性があります。特に資産隠し粉飾決算など悪質な行為は厳しく責任を問われるでしょう。

破産法上で問題となる役員責任

  1. 不正行為と免責不許可事由
    個人破産する役員(代表者)は、破産法252条に定める免責不許可事由に該当すると、借金が免除されなくなります。
    • 資産隠し・虚偽の債務申告
    • 偏頗弁済
    • 詐欺的行為など
      これらが明らかになると、免責が認められないリスクがあります。
  2. 連帯保証・背任との結びつき
    代表者が会社債務に連帯保証している場合、破産手続で会社財産を不正に処分して保証債務の返済に回したなどと疑われれば、破産管財人や債権者が背任行為として代表者を追及する可能性があります。
  3. 刑事責任のリスク
    背任行為や資産隠しが悪質と判断されると、詐欺破産罪(破産法265条)や背任罪(刑法247条)で刑事告発が行われる事例があります。懲役刑や罰金刑が科されれば、代表者個人の社会的信用は大きく失墜します。

実務上の注意点と防止策

  1. 早期相談と経営判断
    倒産が避けられない状況で、後手に回って資金移動や財産処分をすると不正行為の疑いを持たれやすいです。経営が厳しいと感じたら、弁護士に早めに相談し、適切な倒産手続を検討することでリスクを最小限に抑えられます。
  2. 帳簿・決算の透明化
    粉飾や虚偽記載は、会社法と破産法両面から背任・不正と判断されるリスクがあります。日頃から正確な帳簿管理を徹底し、倒産準備段階で帳簿を操作しないよう注意しましょう。
  3. 連帯保証の扱い
    多くの中小企業では代表者が連帯保証をしており、会社破産だけでは代表者個人の借金が免除されません。個人破産も視野に入れるなら、偏頗弁済や不正行為が疑われないように弁護士と連携し、合法的な倒産戦略を立案する必要があります。
  4. 適切な解散・清算手続
    会社が自主的に解散する場合でも、特別清算など適法な手続きを取るのが好ましいです。私的に財産を処分してから事後報告するような行為は背任や詐害行為の疑いを高めます。

弁護士に相談するメリット

  1. 役員責任の回避策・適正手続の提案
    弁護士は会社法や破産法に精通しており、善管注意義務や背任リスクを回避するためにどのような行動を取るべきか具体的に助言してくれます。不用意な資金移動などのミスを防ぎやすくなります。
  2. 債権者・管財人との交渉
    倒産時には債権者が役員の責任追及を検討する可能性があります。弁護士が間に入れば、事実関係を整理し、過失の度合い不正行為の有無を説明し、不要なトラブルを回避できます。
  3. 免責手続のサポート
    個人破産を行う場合、弁護士が免責不許可事由に該当しないよう注意点を指導し、書類作成や裁判所対応を代行します。結果として、不正疑惑のリスクを軽減し、免責を受けやすくなります。
  4. 再起支援の一貫
    倒産後に役員が別の形で起業・就職する場合にも、過去の役員責任追及が尾を引かないよう各種リスク管理法的フォローを提供します。安心して再スタートを切るための土台作りが可能です。

まとめ

役員責任(会社法上・破産法上)の基本を理解することは、倒産を目前にした経営者・役員にとって重要なリスク管理の手段です。

倒産が避けられない局面では、弁護士などの専門家に相談し、合法的な破産手続や再建策を模索することも検討しましょう。安易な資金移動や粉飾・背任行為に走らないよう十分気をつけながら、次のチャンスへ繋ぐ準備を整えましょう。


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