はじめに

法人破産を円滑に進めるためには、手続が遅延したり、取り消しを受けるような事態は何としても避けたいものです。しかし、実際には書類不備や不正行為の疑惑などによって、手続が長期化したり、一度開始された破産手続が途中で取り消されるケースもゼロではありません。本稿では、破産手続の遅延・取り消しリスクを回避するために重要な注意点を整理し、具体的な防止策を解説します。

Q&A

Q1.手続遅延の主な原因は何ですか?

典型的な原因としては、(1)提出書類の不備・不足、(2)不正行為が疑われる取引の発覚、(3)弁護士や裁判所、破産管財人との連絡不足などが挙げられます。特に書類の漏れや虚偽記載は、裁判所の審査を滞らせる要因となります。

Q2.破産手続が「却下」「棄却」になるのはどのような場合でしょうか?

破産法上、手続開始後に支払不能の状態が解消されたり、不正行為によって破産手続を悪用していると判断された場合や、予納金が未納の場合などには、裁判所が破産手続の申立てを却下したり、棄却したりすることがあります。

Q3.手続が遅れると、代表者や債権者にはどんな悪影響がありますか?

時間が経てば経つほど、在庫や設備などの資産価値が下がる恐れがあります。また、債権者への配当も先延ばしになり、利害関係者との紛争が長期化しがちです。代表者も精神的な負担が増し、再起が遅れるリスクがあります。

Q4.不正行為が疑われると、どのように手続が止まるのですか?

破産管財人が疑念を抱いた場合、徹底的な調査が行われ、事実関係が解明されるまで手続全体が遅延する可能性があります。結果的に配当作業も中断され、手続期間が延びるのが通例です。

Q5.弁護士に依頼していれば、遅延や却下等のリスクはなくなりますか?

依頼することでリスクは減少しますが、経営者が不誠実な対応(資料未提出、虚偽報告など)を続けると弁護士も対処しきれない場合があります。弁護士と協力し、正直かつ迅速な情報提供を行うことが重要です。

解説

遅延リスクを高める要因

  1. 書類不備・不足
    債権者一覧表に漏れがあったり、財産目録が不正確だったりすると、裁判所の審理が止まり、補正指示が何度も出されます。
  2. 提出期限の失念
    裁判所や管財人から指定される提出期限を過ぎると、手続がストップし、その間にも財産価値は下がっていきます。
  3. 資産の勝手な処分や偏頗弁済
    破産開始後に経営者が勝手に在庫を処分したり、特定債権者に返済を試みると、不正行為の疑いを招きます。
  4. 弁護士との連携不足
    弁護士が必要とする情報を経営者が速やかに提供せず、意思疎通が途絶えると書類作成や裁判所対応が大幅に遅れます。

却下・棄却を招く主なパターン

  1. 申立自体が虚偽
    会社が実は支払不能ではないのに虚偽申立をした場合、法的には破産原因が存在しないため、手続が棄却される恐れがあります。
  2. 予納金未納
    裁判所に納める予納金を準備できず、指定期限までに納付しなかった場合、手続は開始されても後で取り消される可能性があります。
  3. 不正行為による破産悪用
    破産申立を利用して債権者を騙そうとしているなど、詐欺的行為が明らかになると、裁判所が手続を棄却されることがあります。

防止策と実務ポイント

  1. 早期相談と計画的な書類準備
    倒産の可能性が浮上したら、すぐに弁護士や税理士と連携し、債権者一覧や財産目録などの基本資料を整えるのが最善策です。
  2. 定期的な進捗共有
    裁判所や破産管財人、弁護士と常に連絡を取り合い、必要な書類や情報をタイムリーに提供します。質問や疑問点は早期に解消し、スムーズな手続を目指しましょう。
  3. 誠実な情報開示
    資産や債権者に関する情報を隠したり、虚偽の説明をすると、あとで取り返しのつかないトラブルに発展します。必ず正直に状況を報告しましょう。
  4. 予納金の確保
    手続開始前に、予納金をどうやって準備するか計画を立てましょう。親族や知人からの借入れ、会社の資産処分など、弁護士のアドバイスを受けながら無理なく確保する方法を探します。

弁護士に相談するメリット

  1. 書類作成の精度向上
    弁護士は破産手続の要点を熟知しており、債権者一覧や財産目録などの作成を的確にサポートしてくれます。不備や漏れのリスクを軽減することが可能です。
  2. 補正指示への対応
    裁判所から補正指示が出ても、弁護士が中心となって修正作業を行えば、短期間で修正完了が見込めます。
  3. 不正疑惑を未然に防ぐ
    過去の資金移動や財産処分の経緯を精査し、不正とみなされるリスクがある場合は早期対応策を助言してくれます。結果的に手続の遅延や却下等のリスクを回避できます。
  4. 予納金の準備とスケジュール管理
    弁護士は過去の経験から予納金の目安を把握しており、資金調達策のアドバイスを行います。また、申立から開始決定までのタイムラインを管理し、期限超過がないようサポートします。

まとめ

手続遅延や却下等を避けるための注意点は、破産手続をスムーズに進めるうえで極めて重要です。主なポイントを再整理すると

  1. 書類準備の徹底
    不備や漏れがあれば、補正対応で手続が大幅に遅れる。
  2. 連絡・進捗管理
    裁判所や破産管財人、弁護士とマメに連携し、指示を守る。
  3. 誠実な情報開示と不正行為の回避
    偏頗弁済や財産隠しは、遅延だけでなく取り消しや免責不許可にも直結する。
  4. 予納金を確保する計画性
    予納金が未納だと手続が成立せず、中断や却下等のリスクが高い。

これらをしっかり守っていれば、破産手続を大きなトラブルなく完了させる可能性が高まります。初めての破産手続で迷うことが多いかもしれませんが、お早めに弁護士へ相談し、プロのサポートを受けることもご検討ください。


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