はじめに
法人破産が裁判所によって正式に始まると、破産管財人のもとで清算(財産の換価)と配当のプロセスが進められます。会社に残っている不動産や在庫、設備・備品などの資産はすべて換価され、そのお金を債権者へ分配していくのです。しかし、ここでは担保権の有無や優先債権(税金や未払い賃金など)、一般債権の順位など、複雑なルールが絡んできます。
本記事では、破産手続における清算・配当の進め方にフォーカスし、財産の換価・処分の手順や、配当順位の概要、実務上の注意点などを分かりやすく解説します。倒産が避けられない状況であっても、正確な知識を持って臨むことで、混乱やトラブルを最小限に抑えられるでしょう。
Q&A
Q1.清算とは具体的に何をするのですか?
会社の保有している有形・無形の財産をすべて売却(換価)し、得られた現金を債権者に分配するプロセスです。不動産や設備、在庫、売掛金など、多岐にわたる資産を整理し、最終的に会社を消滅させる手続きでもあります。
Q2.担保がついている財産(抵当権など)はどう扱われますか?
抵当権や質権などの担保権が設定された財産は「別除権」として扱われ、担保権者がその財産から優先的に弁済を受けられます。残った金額がある場合、破産財団に取り込まれて他の債権者に配当されます。
Q3.税金のような優先債権は、他の債権より先に支払われるのでしょうか?
はい。税金は、「優先債権」とされ、一般債権より先に弁済されます。
Q4.清算と配当はどのくらいの期間を要するのですか?
会社の規模や財産の種類、債権者数、不正行為の疑いの有無などによって大きく変わります。小規模な破産だと半年~1年ほどで終わるケースもありますが、大きな不動産や多数の債権者が絡む場合は数年単位になることもあります。
Q5.配当後に追加の財産が見つかった場合、どうなるのですか?
既に手続が終わっていても、重大な財産が後から発見されれば、破産手続が再開される可能性があります。いわゆる「忘れ物の財産」が見つかったときは、管財人が追加で換価配当を進めることがあります。
解説
清算(財産の換価)の流れ
財産調査
破産管財人が、会社の全資産(不動産、動産、在庫、売掛金、知的財産など)をリストアップします。不正行為が疑われる場合は、過去の資産移動も調査対象になります。
売却・回収
- 不動産:公売・競売、または不動産会社や任意売却で買い手を探す。
- 在庫・設備:業者に引き取ってもらう、オークション・入札などで現金化。
- 売掛金:取引先に支払いを求め、滞納があれば法的手段で回収する場合も。
担保権付き財産への対応
担保がある財産は担保権者の優先弁済に用いられます。担保権者が弁済を受けた後の残余があれば、破産財団に組み入れられる形です。
金銭化
すべての資産を売却・回収・精算して現金化すると、破産財団としての「配当可能額」が確定していきます。
配当の優先順位
破産法では、下記のような順序で配当が行われます。
別除権(担保権)
担保物件を処分してまず担保権者が回収し、残った金額は破産財団へ戻る。
一般優先債権
労働債権(一定額まで)や租税債権など、法律上優先権が定められている債権がここに該当。
一般債権
金融機関や取引先の未払債権、社債、その他の貸付金など、多くの債権がここに含まれる。
劣後債権
当該法人の出資者(株主)に対する配当は、ほぼ残らないのが通例。
実務上のポイント
換価方法の選択
不動産を競売にかけるか、任意売却を行うか、在庫処分をまとめて業者に委託するかなど、管財人の判断で最適な換価方法が選ばれます。経営者や関係者が有利な価格で売却できる買手を知っている場合、管財人に情報を提供するとスムーズに進むことがあります。
債権者集会での報告
破産管財人は、財産の売却や配当状況を債権者集会で定期的に報告します。債権者が異議を述べる場合もあり、話し合いの結果として換価方法が変更されることがあります。
配当の複数回実施
財産が段階的に換価されるケースでは、第一回配当、第二回配当…と複数回にわたって分配が行われる場合も。すべての資産が現金化された段階で最終配当が行われ、手続が終結します。
不正行為の防止
清算を進めるなかで、経営者や関係者が勝手に在庫を持ち出したり、特定の債権者に弁済を試みたりすると、大きな問題になります。管財人から追及されるリスクが高いため、財産管理は管財人の指示を仰ぎながら進めることが重要です。
弁護士に相談するメリット
財産調査・売却計画のサポート
弁護士は、在庫や設備、不動産などの売却手順に関するガイドを提供し、管財人とのコミュニケーションを円滑化します。経営者が有力な売却先を知っている場合、適切に情報を共有し、最善の価格で換価できるよう調整してくれます。
優先債権・担保権対応のアドバイス
賃金や税金、担保権などが絡むと手続が複雑になりがちです。弁護士は優先債権や担保権の範囲を整理し、正しい順位で配当が行われるよう支援します。
債権者集会・管財人との交渉サポート
債権者集会では、経営者や従業員からの質問に管財人が答えたり、場合によっては紛糾することも。弁護士が代理人として立ち会うことで、スムーズな議事進行と的確な意見表明が可能になります。
不正行為リスクの事前回避
清算が進む過程で、不意に偏頗弁済や財産隠しが行われてしまうと、手続全体が停滞します。弁護士は違法行為とみなされる可能性のある行動を事前にチェックし、適切な対応策を提示します。
まとめ
破産手続での清算・配当は、会社が保有するあらゆる財産を換価し、ルールに基づいて債権者に分配する重要なプロセスです。
- 清算では不動産や在庫、動産、売掛金などを売却・回収
- 担保権や優先債権など、配当順位が明確に定められている
- 在庫処分や不動産売却の方法を誤ると値崩れや手続遅延が生じる
- 不正行為を行うと代表者個人への責任が一層重くなるリスク
適正かつ円滑な清算を行い、債権者への配当を済ませることで、会社としての法的整理が完了します。ここでの対応によっては、代表者個人が再起しやすい環境を整えるかどうかにも影響が及びます。余計なトラブルを避けたいなら、お早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家に相談し、管財人との連携を図りましょう。
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