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【人材育成】社内研修とOJT制度の設計|教育訓練給付金を活用し、生産性アップを実現する

はじめに

労働人口が減少し、企業競争が激化する現代では、人材育成が企業の成長を左右する大きな要素となっています。社内研修・OJT(On-the-Job Training)制度を整備し、従業員のスキルアップやモチベーション向上を図ることが、組織力の強化定着率の改善に直結します。

また、日本では教育訓練給付金(雇用保険の制度)の活用により、従業員が外部研修や資格取得を行う際、経済的な支援を受けられる仕組みがあります。企業としても、従業員が主体的に学び成長する環境を提供することで、生産性企業ブランドの向上が期待できます。本記事では、社内研修・OJT制度を構築するうえでのポイントや、教育訓練給付金の概要を弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説します。

Q&A

Q1:社内研修とOJTは何が違うのでしょうか?

社内研修とは、座学形式やオンライン学習など、集合研修の形態で行うケースが多いです。一方、OJT(On-the-Job Training)は、日々の業務の中で実際に先輩や上司が仕事を教え、従業員が実践を通じてスキルを習得する方法です。両者をうまく組み合わせることで、理論と実践の両面から効果的な学びを得られます。

Q2:教育訓練給付金とはどのような制度ですか?

雇用保険に加入している労働者や離職者が、厚生労働大臣指定の教育訓練を受講し修了すると、その費用の一部が支給される制度です。具体的には、一般教育訓練給付金専門実践教育訓練給付金の2種類があります。専門実践教育訓練給付金はより高額な支給が見込める代わりに、対象コースが限定されています。

Q3:社内研修の費用を教育訓練給付金で賄うことは可能ですか?

通常、社内研修は自社が独自に実施するものであり、外部機関の指定教育訓練に該当しない限り、教育訓練給付金の対象外となるケースが多いです。但し、企業が認定スクールや外部研修機関と提携してプログラムを実施し、厚生労働大臣の指定を受けた研修コースであれば、従業員が給付金を受けられる可能性があります。

Q4:社内研修で従業員に違約金を課すことはできますか?

労働基準法16条で「違約金の定め」や「損害賠償の予定」を禁じており、過度な制限は違法となるリスクがあります。ただし、研修費用を会社が全額負担している場合に、従業員が短期退職してしまった際のコスト負担をどうするかという問題はよくあります。適法性を確保するには、合理的な範囲での負担回避策や一定の返還義務を契約書や就業規則で規定し、裁判例で認められた基準を満たすように設計する必要があります。

解説

社内研修・OJT制度構築の意義

  1. 人材育成と定着率向上
    • 従業員が入社してすぐ必要なスキルを得られる研修プログラムや、職場で実践的に学ぶOJTの体制があると、ミスマッチや早期離職を防ぐ効果が期待できます。
    • 成長環境を提供する企業は「キャリアアップが望める」と評価され、優秀な人材を確保しやすくなります。
  2. 企業文化・理念の浸透
    • 社内研修では、単なるスキルや知識の伝達だけでなく、企業のミッションビジョンバリューを新入社員や既存社員に共有する場としても有効です。
    • コミュニケーションスキルやリーダーシップなど、企業文化を背景にしたソフトスキル教育も重要なテーマとなります。
  3. 業務効率化とイノベーション
    • 従業員のスキルレベルが向上すれば、業務の効率が改善され、生産性向上につながります。
    • 新しい知識やアイデアを積極的に取り入れることで、企業としてイノベーションを起こしやすい環境を築けます。

具体的な研修プログラム設計

  1. 階層別研修
    • 新入社員研修、若手社員研修、中堅社員研修、管理職研修など、従業員のキャリアステージや役職に応じたプログラムを用意します。
    • 目標管理や評価制度とも連動させ、学びの成果を明確にすることでモチベーションを高められます。
  2. 職種別・専門スキル研修
    • エンジニア向けの技術研修、営業スタッフ向けのセールストレーニング、経理・人事向けの実務講座など、業務内容に特化した研修を提供します。
    • 外部の専門講師やeラーニングシステムを活用することで、より高度な知識・スキルを習得できる環境を整えられます。
  3. OJT計画とフォローアップ
    • OJTは、配属先の先輩社員が指導担当者として、計画的に新人や後輩を育成する仕組みがポイントです。
    • 指導担当者向けのマニュアルや研修を行い、「教え方が分からない」「OJTが形骸化する」といった問題を防ぎます。
    • 定期的な進捗確認・面談を実施し、指導担当者と被指導者がコミュニケーションを図る体制を整えます。

教育訓練給付金の概要と活用

  1. 一般教育訓練給付金
    雇用保険被保険者が、指定された一般教育訓練講座(資格取得やスキルアップコースなど)を修了した場合、**受講料の20%(上限10万円)**が支給される制度です。
  2. 専門実践教育訓練給付金
    専門性の高い実践的講座(大学院、看護学校、IT・介護・保育などの専門課程)を対象に、受講費用の50%(年間上限40万円)を支給する制度で、修了後一定の要件を満たせばさらに追加支給(+20%)があります。
  3. 企業としてのメリット
    • 従業員が外部講座を受講して専門スキルを獲得する際、給付金制度が利用できれば自己負担を軽減でき、学習意欲が高まります。
    • 企業が研修費用を一部または全額負担する場合でも、教育訓練給付金が従業員の支援となることでモチベーションが上がり、双方にメリットがあります。
  4. 活用上の注意点
    • 給付金の対象となるには、厚生労働大臣指定を受けた講座であることが必須。企業内研修が対象外の場合もあるため、ハローワークや厚生労働省の指定状況を確認しましょう。
    • 従業員が給付金を受給できるかどうかは、雇用保険の加入期間や受講歴など個別の事情に左右されるため、企業としてはサポートや情報提供を行いつつ、従業員自身がハローワーク等で要件を確認するよう促すことが大切です。

弁護士に相談するメリット

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、社内研修・OJT制度の構築および教育訓練給付金の活用をめぐる各種問題に対し、以下のようなサポートを行っています。

  1. 就業規則・研修規程の整備
    • 研修・OJT制度を運用するにあたっては、就業規則や研修規程に研修の目的・受講義務・費用負担・退職時の扱いなどを明確に記載し、従業員とのトラブルを回避します。
    • 法令や判例を踏まえ、違約金問題や不利益変更が生じないような条項設計を行います。
  2. 違約金・返還規定の合法性アドバイス
    • 研修費用を負担したのに短期退職されてしまうと、企業が不利になるケースがありますが、これを防ぐための返還義務条項は過度に広いと無効とされる可能性が高いです。
    • 判例に照らし、合理的範囲でのコスト回収策を検討・提案します。
  3. 労務管理・ハラスメント対策
    • 研修やOJTの指導が原因でパワハラ問題に発展する事例もあり、管理職・指導担当者への研修が重要となります。
    • 指導方法やフィードバックのルールづくり、ハラスメント防止施策を法的視点から助言し、企業内のコンプライアンス強化をサポートします。

まとめ

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