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【有期・派遣・パートの労務管理ガイド】法規制やトラブル事例から学ぶ、企業が押さえるべきポイント

はじめに

現代の企業経営では、正社員だけでなく有期契約社員派遣労働者パートタイマーなど、多様な雇用形態の従業員を活用することが一般的になっています。それぞれの雇用形態には法的な規定労働条件が異なる面があり、管理方法を誤ると未払い残業代や雇止め、待遇差に関する紛争などにつながるリスクが高まります。

また、近年は同一労働同一賃金働き方改革の推進に伴い、非正規社員に対する待遇差の是正や雇用継続の保障などに関する法律・判例も増加しており、企業としては最新のルールに即した管理体制を整備しなければなりません。本記事では、有期雇用・派遣・パートタイマーの管理上のポイントや、トラブル防止策を弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説します。

Q&A

有期契約社員とは具体的にどのような人たちのことを指すのでしょうか?

契約期間に定めがある雇用契約を結んでいる労働者を指します。契約期間は6か月、1年など一定の期限が設けられており、満了を迎えると契約更新か終了かを判断することになります。ただし、契約が繰り返し更新されたり、長期間にわたる就労が実態化している場合は、雇止め法理(解雇と同様の規制)によって契約終了が制限されるケースもあるため注意が必要です。

派遣労働者を受け入れる場合、どのような法的義務がありますか?

派遣先企業としては、派遣法(労働者派遣法)に基づき、適切な受け入れ期間の管理や、派遣労働者の就業条件の確保、労働安全衛生面の配慮などが求められます。受け入れ期間にも上限があり、個人単位・事業所単位での制限が設けられているため、3年ルールなどをしっかり把握しておく必要があります。

パートタイマーとアルバイトは法律上どのように扱われるのでしょうか?

パートタイマーやアルバイトといった呼称自体に法律上の定義はありません。一般的には短時間労働(フルタイムより労働時間が短い)である場合をパートやアルバイトと呼ぶことが多いですが、労働基準法の適用という観点ではいずれも「労働者」として保護されます。特に、賃金や労働条件の明示義務、労災保険・雇用保険の加入要件などは正社員と変わらず、企業としては適切な手続きを取らなければなりません。

同一労働同一賃金の導入で、パートや有期契約社員の賃金体系を正社員と同じにしないと違法になりますか?

必ずしも「全く同じ賃金体系」にする必要はありません。しかし、業務内容配置転換の範囲責任の程度などが正社員と同等である場合は、待遇差に合理的な理由が求められます。無合理な差別的取り扱いは違法とされる可能性が高いので、具体的な職務内容や責任範囲を明確化し、それに応じた賃金・手当・福利厚生の設定が求められます。

解説

有期契約社員の管理ポイント

  1. 契約書の作成と更新手続き
    • 有期契約社員を雇う場合は、契約期間更新条件賃金業務内容などを明記した労働契約書の作成が不可欠です。
    • 契約更新を繰り返すことで実質的に無期雇用と変わらない状態になっているにもかかわらず、企業が一方的に「更新しない」とする雇止めは、解雇の法理に準じて無効となるリスクがあります。
  2. 無期転換ルールへの対応
    • 同じ企業で有期契約が通算5年を超えると、労働者の申込により無期雇用契約へ転換する権利が発生します(無期転換ルール)。これを適切に管理しないと、後々トラブルになるケースが見られます。
    • 無期転換後の就業規則や賃金制度なども事前に整備しておくことが望ましいです。
  3. 待遇差の説明義務
    • 近年の法改正で、非正規労働者から求めがあった場合、待遇差の内容・理由を説明する義務が企業に課されています。
    • 説明が曖昧だったり、差別的な扱いを正当化できない場合は、紛争が生じる可能性が高まるので注意が必要です。

派遣労働者の管理ポイント

  1. 受け入れ期間の制限
    • 同一の派遣労働者を**同一の組織単位(課やグループなど)**で受け入れる場合、最長3年というルールが設けられています(一般派遣)。ただし、抵触日より前に労働者を入れ替えるか、受け入れ先での過半数労働組合等の意見を聴取して派遣期間延長の手続きを行うなど、企業には適切な対応が求められます。
    • 無期限での受け入れは原則として認められません。
  2. 派遣先責任の明確化
    • 派遣労働者の指揮命令は派遣先企業が行うため、安全衛生上の配慮義務労働災害発生時の責任分担などが問題となるケースがあります。
    • 就業中に生じるトラブルやハラスメントなどへの対応は、派遣先企業と派遣元企業が連携して行わなければなりません。
  3. 均等・均衡待遇
    • 派遣労働者にも、派遣先の通常の従業員との間で不合理な待遇差を設けないようにするための規定があります。
    • とりわけ賃金や福利厚生、教育訓練などについては、派遣先企業が具体的に情報提供を行い、派遣元企業が適切に処遇を決定する必要があるため、双方のコミュニケーションが重要です。

パートタイマーの管理ポイント

  1. 労働条件通知書の交付
    • 時給や勤務時間、休日、昇給の有無などを明示し、就業規則にも沿った形で管理します。通知を怠ると労働基準法違反となる恐れがあります。
    • パートタイマーだからといって社会保険未加入で済ませるなどの安易な判断はリスクが高いので、所定の要件(週の所定労働時間、契約期間の見込みなど)を満たす場合は適切に加入手続きを行わなければなりません。
  2. シフト管理と労働時間の把握
    • パートタイマーの場合、シフト制が多く導入されるため、実際に働いた時間シフト表が乖離しないようこまめな勤怠管理が必要です。
    • 未払い残業代や休日手当の支払い漏れがないよう、タイムカードや電子システムの活用を徹底しましょう。
  3. キャリアアップ・正社員登用制度
    • モチベーション向上や人材定着を図るため、正社員登用制度やキャリアアップの仕組みを整備している企業も増えています。
    • 一方で、登用試験や選考基準が不明確なまま運用されると、差別や不当な不合格の疑念を抱かれ、紛争に発展するケースもあるため要注意です。

弁護士に相談するメリット

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、多様な雇用形態に関する法的課題に対し、以下のようなメリットを提供いたします。

  1. 最新の法改正・判例を踏まえた書式整備
    • 有期契約や派遣契約、パートタイマー向けの雇用契約書・就業規則・労使協定などを、最新の法改正や判例に合わせてアップデートします。
    • 無期転換ルールや同一労働同一賃金の対応についても、企業の実情に即したアドバイスを行います。
  2. リスクマネジメントの徹底
    • 雇止めや派遣期間満了、パートの契約更新など、各種契約終了時のトラブルを未然に防ぐためのリスクマネジメント体制を提案します。
    • 万が一トラブルが起きた場合でも、早期解決に向けて労働審判や訴訟対応を専門的にサポートします。
  3. 柔軟な人事戦略の構築
    非正規社員のモチベーションを高めながら、コスト面でも最適化を図るために、評価制度キャリア支援制度福利厚生の見直しなど、総合的なコンサルティングが可能です。
  4. 派遣先・派遣元との連携サポート
    派遣労働者の受け入れに際しては、派遣先・派遣元双方が適切な契約を交わし、法律遵守の体制を整える必要があります。契約書や協定書のチェック、均等・均衡待遇のための情報交換体制など、スムーズな連携を支援します。

まとめ

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