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経営不振・資金ショートの危機 法人破産に至る代表的な原因とは

はじめに

経営者にとって、会社を軌道に乗せて成長させるのは最大の使命であると同時に、時として大きな困難にも直面します。マーケットの急激な変化や取引先の倒産、社会情勢の変動など、企業を取り巻くリスクは多岐にわたります。これらの要因が重なり合い、「法人破産」という選択を迫られるケースも少なくありません。

本記事では、法人破産に至る代表的な原因として、経営不振や資金繰り悪化などのポイントを整理します。すべての企業が破産のリスクを抱えているといっても過言ではありませんが、事前に原因や兆候を把握しておくことで、適切なタイミングで対策が打てる場合もあります。この記事を参考に、少しでも経営改善のヒントや破産回避の糸口を見つけていただければ幸いです。

Q&A

売上が減少しているだけでは、すぐに破産になるわけではないですよね?

もちろん、売上減少=即破産というわけではありません。ただし、売上が減少することで利益が出なくなり、赤字が連続すると、いずれ資金繰りに行き詰まる可能性が高まります。売上減少に加えて、金融機関からの追加融資が得られない、取引先からの入金遅延が生じるなどの要因が重なると、破産リスクが高まるケースもあります。

取引先の倒産が引き金となって、連鎖的に破産することはあるのですか?

いわゆる「連鎖倒産」と呼ばれるケースは少なくありません。主要取引先の倒産によって売掛金が回収できなくなり、自社の資金繰りが急激に悪化して倒産に至ることは現実問題として起こり得ます。

社長や経営陣の経営ミスが原因で破産に至ることもあるのでしょうか?

経営戦略の失敗や過度な投資、過剰な借入れ、在庫管理のミスなどが原因となり、破産に至るケースは少なくありません。また、帳簿上の不正や粉飾決算が発覚した結果として、信用を失い銀行融資がストップし、破産に追い込まれる場合もあります。

一時的に資金繰りが厳しくても、リスケ(返済条件の変更)で乗り切れる場合はありますか?

金融機関に対してリスケジュールの交渉を行い、返済期間の延長や利息減免を得られれば、一時的には資金繰りを改善できることもあります。しかし、根本的な事業改善ができないままリスケを繰り返すと、いずれは破綻リスクを先送りしているだけの状態に陥ることも。早期の経営改善や事業再生が重要です。

経営改善してもどうにもならない場合、やはり破産を選択するしかないのでしょうか?

経営改善の余地が全くない、あるいは負債が膨大すぎる、取引先の信用が失墜しているなどの事情がある場合には、破産が最適な選択になることがあります。ただし、民事再生や任意整理など、他の手段で再生可能なケースもあるため、まずは専門家に相談して自社にとって最善の方法を検討すべきです。

解説

法人破産に至る代表的な原因をもう少し詳しく見ていきます。会社の倒産リスクは、単一の要因によって引き起こされるケースはむしろ少なく、多くは複数の悪材料が重なり合うことで破産に至ります。

売上不振・競合激化による収益減

市場競争の激化により価格競争が生じたり、新規参入業者が増えたりすると、既存企業の売上が大幅に減少することがあります。また、主力商品の需要低迷や顧客ニーズの変化に対応しきれない場合も、売上が一気に落ち込む一因です。こうした売上の落ち込みが連続すると、会社の収益力が低下し、資金繰りが厳しくなってしまいます。

過大な借入れと返済負担

将来の成長を見込んで多額の借入れを行ったものの、思ったほど売上が伸びずに返済が滞るケースも珍しくありません。特に、短期借入れで資金を回している場合は、返済スケジュールが厳しく、利息もかさみやすいです。借金の返済が難しくなり、追加融資も断られて資金ショートに至ると破産リスクが高まります。

取引先の倒産や入金遅延

主要取引先が倒産したり、資金難で支払いを遅延したりすると、自社に入ってくるはずの売掛金が回収できず、資金繰りが狂います。この連鎖倒産のリスクは中小企業に特に大きく、1社の倒産が業界全体に波及するケースもあります。

経営ミス・不正行為

経営判断の誤りや過剰投資、在庫ロスの放置など、経営面でのミスが積み重なると、企業体力が徐々に削られます。また、粉飾決算や税務上の不正などが発覚すると、金融機関や取引先の信用が一気に落ちてしまい、資金調達や取引が難しくなる場合もあります。

社会情勢の変化や天災

リーマンショックや新型コロナウイルスの流行など、突発的な社会情勢の変化により、需要が大幅に減少したり、物流が止まることで一気に業績が悪化するケースもあります。さらに地震や台風などの自然災害によって工場や事業所が被災し、事業継続が困難になることも、破産の要因の一つとなり得ます。

弁護士に相談するメリット

破産に至る原因が見えてきた時点、あるいはまだ「破産までいかないが資金繰りに不安がある」段階でも、弁護士へ相談するメリットはあります。

  1. 早期発見と倒産回避策の提案
    破産が避けられないと判断するのは、最後の最後で構いません。それ以前に、民事再生や任意整理といった他の手段で再起を目指せる可能性はないか、弁護士が専門的な視点で判断し、提案します。
  2. 金融機関・債権者との交渉支援
    返済条件の変更(リスケ)や一部債務の減免交渉などは、経営者が単独で行うよりも、弁護士を介したほうがスムーズに進む場合があります。専門家としての交渉力を活かして、有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
  3. 不正行為リスクの洗い出し
    破産手続開始後に不正が発覚すると、代表者個人への責任追及や損害賠償請求リスクが発生することがあります。事前に弁護士が帳簿や取引内容を確認し、不透明な点をクリアにしておくことで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
  4. 破産後の再スタートに向けた計画
    法人破産を選択せざるを得ない場合でも、代表者個人の今後の生活や再就職、再起業の可能性などを考えておく必要があります。弁護士が関与すれば、破産後の手続や個人破産との兼ね合いなども含めて、総合的にサポートを行えます。

まとめ

企業が破産に至る原因は多岐にわたりますが、経営不振や資金繰りの悪化は代表的な要素です。特に売上の長期低迷や過度な借入れ、取引先の倒産などが重なった場合、一気に破産へと転落する危険性が高まります。近年では社会情勢の急変(コロナ禍や世界的な経済危機など)も、倒産リスクを拡大させています。

破産は経営者にとって辛い決断ですが、早めに専門家へ相談することで、倒産回避や再建の可能性を検討できることもあります。万一、破産が不可避であっても、適切な手続を踏むことで損害を最小限に抑え、代表者個人の再スタートに備えることが可能です。ぜひ、問題を先送りにせず、心当たりがある場合は法律事務所などに相談してみてください。

 

資金繰り悪化の兆候や取引先の経営不安など、少しでも気になることがあれば、弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。専門家の視点から的確なアドバイスを得ることで、経営危機を乗り越える糸口をつかめるかもしれません。

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