はじめに

医療機関が直面する経営問題は、競争激化や経営環境の変化により複雑化しています。特に、破産手続を検討せざるを得ない場合、患者や従業員への影響を最小限に抑えながら適切な手続きを進める必要があります。本稿では、医療機関の破産手続の流れと留意点、弁護士に相談するメリットについて解説します。

Q&A

Q: 医療機関が破産することは珍しいことなのでしょうか?

A: 医療機関の破産は以前は珍しいケースでしたが、近年ではその件数が増加しています。これは競争の激化や後継者不足、新型コロナウイルス感染症後の経営環境の変化など、多くの要因が絡み合っているためです。医療機関が破産を考える際には、特有の注意点や手続きがあり、専門家によるサポートが重要です。

医療機関の経営状況

競争激化

近年、医療機関の数が増え続け、地域ごとに競争が激化しています。この競争環境は、患者数の減少や収益の低迷を引き起こし、経営基盤が弱い医療機関ほど大きな打撃を受けています。

後継者不足

特に中小規模の医療機関では、後継者が見つからないケースが増加しています。後継者不在は事業承継の妨げとなり、廃業や破産を選択せざるを得ない要因の一つです。

コロナ融資返済の負担

コロナ禍で「ゼロゼロ融資」の返済が始まり、財務面での圧迫が進んでいます。運転資金の確保が難しくなる中で、経営状況が悪化している事例も目立ちます。

医療機関の破産手続の流れ

医療機関の破産手続は、一般企業とは異なる特殊な点があります。以下にその流れを説明します。

事前準備

  • 財産や負債の状況を精査し、目録を作成します。
  • 患者の転院手続きや従業員対応を進める必要があります。
  • 特に、診療録の保管や引き渡し方法を事前に決定することが重要です。

事業停止

事業停止とともに、行政機関(保健所)への廃止届出書の提出が必要です。

破産申立て

裁判所に破産申立書を提出します。医療機器のリース契約や施設の売却などの処理を含め、申立内容を詳細に記載する必要があります。

破産手続開始決定

裁判所による破産手続開始決定が下されると、破産管財人が選任されます。選任された弁護士が、医療機関の財産管理と換価を進めます。

財産の換価と配当

破産管財人が財産を換価し、債権者への配当を実施します。リース契約の終了手続きや財産の引渡しも行われます。

破産手続の終了

財産処理と債務整理が完了すると、裁判所から破産手続の終了が宣告されます。

医療機関の破産手続における留意点

従業員への影響

  • 従業員の給与未払いが生じた場合、労働者健康安全機構の給与立替払い制度を利用できます。
  • 看護師や事務職員を一部継続雇用し、破産後の事務処理を支援してもらうケースもあります。

患者への影響

  • 入院・通院患者の転院先を確保することが最優先です。
  • 診療録の保管義務(医師法24条2項)は破産後も継続され、適切な保管場所を確保する必要があります。

個人情報保護の遵守

  • 診療録を含む個人情報は適切に管理されなければなりません。

行政手続等の正確な実施

  • 事業停止後10日以内に保健所への届出を行う必要があります。
  • 医療機器のリース契約や施設譲渡の処理に注意が求められます。

弁護士に相談するメリット

専門的なサポート

医療機関の破産は特有の注意点が多く、経験豊富な弁護士に相談することでスムーズに手続を進められます。専門家は法的な問題を整理し、効率的なスケジュールを構築します。

事務負担の軽減

書類作成や債権者対応を弁護士に依頼することで、経営者は自らの生活再建や再起に集中することが可能です。

債権者対応の代理

債権者との交渉や督促対応を弁護士が代行するため、経営者の心理的負担が軽減されます。

法律的リスクの最小化

診療録の保管義務や労働問題への対応など、法律的なリスクを最小限に抑えるアドバイスを受けることができます。

まとめ

医療機関の破産手続は、患者や従業員、行政手続といった多岐にわたる配慮が必要な複雑な手続です。特に、診療録の保管や債権者対応など、専門的な知識が求められる場面が多いため、経験豊富な弁護士に相談することが重要です。

医療機関の破産についてお悩みの方は、弁護士法人長瀬総合法律事務所までご相談ください。適切なサポートで、円滑な手続と経営者の再起を支援します。

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