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法人破産における預貯金を保全するためのポイント

はじめに

法人が破産手続きに入る際、預貯金の保全と適切な管理は事業者にとって大きな課題です。金融機関や債権者への対応が不十分だと、相殺や差押えによって資金が消失してしまい、手続きがより困難になる可能性もあります。この記事では、法人破産の手続き中における預貯金を保全するための基本的なポイントを、Q&A形式で解説します。弁護士に相談するメリットも紹介しますので、破産手続きに直面している経営者や事業主の参考になれば幸いです。

Q&A:預貯金の保全に関する疑問

Q:法人が破産手続きに入る場合、預貯金について注意すべき点はありますか?

A:法人破産の手続きにおいては預貯金の扱いに特に注意が必要です。破産手続きの受任通知を債権者である金融機関に送ると、金融機関は預貯金を相殺する権利を持つため、会社の資金が手元に残らなくなる可能性があります。これを防ぐために、受任通知を発送する前に、預貯金を引き出し、適切に保管することが重要です。また、仮に金融機関への借入がない場合でも、法人が税金などの公租公課を滞納している場合、差押えを受けるリスクがあるため、こちらも注意が必要です。

Q:引き出した現金はどのように保管すればよいですか?

A:通常、破産申立代理人である弁護士の預かり金口座で保管することが一般的です。弁護士の預かり金口座に保管することで、手続きが進む中での資産の管理が透明になり、法的に適正な方法で保全が可能です。破産手続きが進む中で管財人へ引き渡す必要があるため、事前に準備しておくと安心です。

Q:破産手続きの進行中、会社の通帳や印鑑はどのように扱うべきですか?

A:破産手続きに入ると、会社名義の通帳や印鑑を整理し、管財人に引き継ぐための準備が求められます。管財人が適正に資産管理を行うためには、通帳や印鑑を含む金融関係の書類を明確に整理し、必要な書類が揃っていることが重要です。この準備により、破産手続きがスムーズに進み、資産の適正管理が確保されます。

預貯金を保全するためのポイント

1.破産受任通知の前に預貯金を引き出す

法人が破産手続きに入る際、金融機関に対する受任通知の発送後に、預貯金が相殺されてしまうことが一般的です。受任通知が届くと、金融機関は法的に預貯金を借入金と相殺することが可能であり、この結果、手元資金がなくなるリスクがあります。そのため、受任通知を送る前に預貯金を事前に引き出し、安全に管理しておくことが必要です。これによって、破産手続きに必要な資金を確保し、手続きの途中で資金が不足する事態を回避します。

2.公租公課の滞納に対する差押えリスクの防止

破産手続きにおいて、債権者である金融機関だけでなく、税金などの公租公課の滞納についても慎重に確認する必要があります。税金の未納があると、国や地方自治体が預貯金に対して差押えを実行する可能性があるため、滞納がないかを確認しておきましょう。

3.引き出した現金の安全な保管方法

引き出した現金は、通常、破産申立代理人である弁護士の預かり金口座に保管するのが一般的です。この方法を取ることで、破産手続きが進行する間、資産が適切に保全されます。弁護士の預かり金口座を利用することで、透明性が確保され、破産手続きの中で資産管理の正当性を証明しやすくなります。

4.会社名義の通帳や印鑑の整理と管財人への引き渡し

破産手続きでは、会社名義の通帳や印鑑を適切に整理し、管財人に引き渡すことが求められます。手続きにおいて、会社の資産を適正に管理するためには、管財人が正確な資産情報を把握する必要があるため、通帳や印鑑を事前に整理し、必要な情報を正確に把握しておくことが大切です。これにより、破産手続きがスムーズに進むだけでなく、手続き後のトラブルも回避しやすくなります。

弁護士に相談するメリット

1.法的リスクを最小限に抑えるサポート

破産手続きに関して、弁護士に相談することで、預貯金保全のための法的リスクや債権者との対応に関するアドバイスを受けることができます。特に、金融機関や税務署などの対応には法的な知識が必要であり、弁護士が専門的な見地からサポートすることで、法的リスクを最小限に抑えることができます。

2.引き出した資金の透明な管理

破産手続きの中で、引き出した資金の透明性を確保するために、弁護士が管理する預かり金口座に預けることで、破産手続きの資産管理が明確になり、不透明な資産処理を防ぐことができます。これにより、管財人との連携が円滑に進み、手続きがスムーズに行える環境が整います。

3.手続きの円滑化と管財人への的確な引き継ぎ

弁護士に依頼することで、管財人への引き継ぎや必要書類の準備が効率的に進むため、破産手続き全体のスピードが向上します。資産の適正な管理が行われることで、破産手続き後のトラブルも未然に防ぐことができ、企業経営者の負担が軽減されます。

まとめ

法人が破産手続きに入る際、預貯金の保全と管理は重要な対応項目です。破産受任通知の発送前に預貯金を引き出し、弁護士の預かり金口座で適切に保管することは、破産手続きをスムーズに進めるための基礎です。また、公租公課の滞納がある場合の差押えリスクや、通帳や印鑑の整理など、法的手続きに沿った準備が求められます。弁護士に相談することで、法的リスクを抑えた対応が可能となり、資産の透明性を確保しつつ、円滑な破産手続きを進めることができます。

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