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従業員の感染情報を第三者に提供することの可否

従業員の感染情報を第三者に提供することの可否

ポイント

  1. 従業員の感染情報を第三者に提供する場合には、原則として本人の同意を得る必要がある
  2. 例外的に本人の同意を得る必要がなく第三者に提供することができる場合でも、本人が特定できないように配慮することが望ましい

質問

当社の従業員がコロナウイルスに感染した場合、感染者が発生したことをビル管理会社や取引先に提供することは問題ないでしょうか。

回答

従業員の感染情報をビル管理会社や取引先に提供することは、「第三者提供」にあたることになります。

「第三者提供」にあたる場合、原則として本人の同意が必要となります。

例外的に2次感染防止等のために本人の同意を得ずに「第三者提供」ができるとしても、できる限り本人が特定できないよう開示する情報は狭めるなどの配慮が求められます。

解説

第三者提供の可否

個人データを第三者に提供することの可否について、個人情報保護法23条は以下のように規定しています。

(第三者提供の制限)

第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

一 法令に基づく場合

二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

 

したがって、従業員の感染情報を、入居しているビル管理会社や取引先等に提供することは、原則として従業員本人の同意を得る必要があります。

例外として、個人情報保護法23条1項各号に該当することを理由として、従業員本人の同意を得ずにビル管理会社や取引先に感染情報を提供することも可能となります。

この点、個人情報保護委員会では、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて」というサイトにおいて、以下のように回答し、従業員本人の同意なく提供することは可能であるとの見解を示しています(「(別紙)個人情報保護法相談ダイヤルに多くよせられている質問に関する回答」)。

問2.社員が新型コロナウイルスに感染し、当該社員が接触したと考えられる取引先にその旨情報提供することを考えている。社員本人の同意を取ることが困難なのだが、提供することはできるか。

(答) 当該社員の個人データを取引先に提供する場合、仮にそれが当初特定した利用目的の範囲を超えていたとしても、取引先での2次感染防止や事業活動の継続のため、また公衆衛生の向上のため必要がある場合には、本人の同意は必要ありません。

開示する情報への配慮

もっとも、あくまでも2次感染防止等のために第三者に提供するものですから、誰が感染したかという固有名詞や所属部署等までの詳細な情報の公表は控えたほうが無難といえます。

一例ではありますが、「職場に感染者が発生した」という事実にとどめ、個人を特定できないようにして提供すべきといえます。

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