【ポイント】
- 学校の休校等のために出社できない場合には、出社できないことに対する懲戒処分等を付すことはできない
- ノーワークノーペイの原則により、会社が賃金を支払う義務はない
- 助成金制度を利用して社員の所得補償を図ることを検討する
【相談例】
当社の社員から、「学校が休校となってしまったために子どもの面倒を見なければならず、出社できません。」という申告がありました。
社員自身の健康状態に問題はないようですが、会社としてはどのように対応すべきでしょうか。
【回答】
学校が休校となってしまったために子どもの面倒を見ざるを得ず、出社することができない場合には、会社としても社員の負担を考慮し、出社を命じるべきではありません。
また、社員の落ち度で出社できないというわけではありませんので、懲戒処分に付すこともできないと解されます。
一方、社員が自らの選択で出社しないと解されることから、会社は賃金の支払義務を負わないといえます(ノーワークノーペイの原則)。
ただし、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、小学校等が臨時休業した場合等に、助成金を受けることができる制度が創設されています。
会社としては、社員の所得を補償するために、助成金制度を利用することも検討しましょう。
【解説】
学校の休校等による出社ができない場合の対応
小さい子どものいる社員の中には、新型コロナウイルス感染症の影響によって学校等が休校になり、子どもの預け先が見つからずに出社が困難となってしまう場合があります。
このような事情による欠勤の場合、社員(労働者)の意思によって欠勤したというわけではないため、出社できないことに対する懲戒処分その他の不利益処分を科すことはできないと解されます。
会社としては、社員の負担を考慮し、出社を命じるべきでもないでしょう。
賃金の支払義務の有無
一方、出社できない社員に対する賃金の支払義務があるかどうかという点ですが、社員が自らの選択で出社しないと解されることから、会社は賃金の支払義務を負わないといえます(ノーワークノーペイの原則)。
助成金制度の活用
もっとも、会社としては賃金の支払義務がないとはいえ、社員の収入源を考慮すれば、助成金制度を活用することが考えられます。
国は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、小学校等が臨時休業した場合等に、助成金を受けることができる制度を創設しました[1]。
この助成金制度は、令和2年2月27日から6月30日までの間に、以下の子どもの世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主は助成金の対象となる、というものです。
助成金額は日額8330円を上限としていること、申請期間は令和2年9月30日までとしていることに留意が必要ですが(令和2年5月10日時点)、会社の経済的負担を軽減する措置として利用することも検討しましょう。