企業法務リーガルメディア

監査役 社外取締役退任後、社外監査役として選任することの可否

監査役 社外取締役退任後、社外監査役として選任することの可否

相談事例

当社は監査役会設置会社であり、社外取締役・社外監査役を選任していますが、このたび6月の株主総会において社外取締役A氏について、社外取締役の任期満了とともに、直ちに社外監査役に選任(新任)することを検討しています。

A氏の社外取締役退任後、直ちに社内又は社外監査役として選任することに何か問題があるでしょうか?

回答

A氏が社外取締役を退任した後、同氏を社内監査役に選任することについては会社法上特段の問題はないと思われますが、社外監査役として選任することは社外監査役選任の要件を満たさず、会社法上認められないものと思われます。

こちらの記事もご参照ください。

[blogcard url=”https://houmu.nagasesogo.com/media/column/column-381/”]

解説

取締役退任後、監査役として選任することの可否(「横すべり監査役」)

「監査役の選任・終任—取締役退任後、監査役として選任することの可否」(いわゆる「横すべり監査役」)」で解説したとおり、事業年度の途中で招集された株主総会において、それまで取締役であった者が退任して新たに監査役に選任された場合、当該監査役(いわゆる「横すべり監査役」)は、自分が取締役であった期間についても監査役として自らを含む取締役の職務執行を監査することとなります。

かかる横すべり監査役による自己の取締役としての職務執行に関する監査は自己監査といえ、監査役と取締役等との兼任を禁止し、自己監査を防止して公正な監査を担保しようとした会社法335条2項の趣旨に反しないかが問題となりますが、学説の多数説は、会社法335条2項は、文言上、退任した取締役が直ちに監査役となることを禁止しておらず、退任後における事後的な「自己監査」は動向の対象外であること等を理由に、特に同項に違反しない、としています。

また、平成17年改正前商法276条(会社法335条2項に相当します)に関する裁判例ではありますが、「取締役であった者が立場を変えて心機一転監査役の立場で過去の取締役としての職務執行を事後監査することは可能」と判示しています。

したがって、社外取締役退任後、社内監査役に選任することは会社法上、問題ないものと思われます。

社外監査役の要件

もっとも、監査役会設置会社(会社法2条10号。なお、公開会社である大会社は監査役会の設置が強制されます)においては、監査役の半数以上は社外監査役であることが必要である(会社法335条3項)ところ、社外監査役として選任するためには、会社法335条2項(兼任禁止)の要件のほか、以下の要件全てを充足する必要があります。(会社法2条16号)

そのため、社外取締役であった者が、退任後、当該会社の社外監査役となることは10年間禁止されていることになります。

ご相談のケースについて

ご相談のケースでは、事業年度途中の6月末の株主総会でA氏が社外取締役を退任した後、A氏を社内(常勤)監査役に選任することは監査役の兼任禁止規定に反せず問題ありません。

もっとも、監査役会設置会社においては、監査役の半数以上が社外監査役であることが必要となるところ、社外監査役として選任するためには「その就任前10年間その会社又は子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人であったことがないこと」が要件となります。

したがって、社外取締役退任直後のA氏を社外監査役として選任することは認められないものと思われます。

メールマガジン登録のご案内

「弁護士法人 長瀬総合法律事務所」では、定期的にメールマガジンを配信しております。セミナーの最新情報、所属弁護士が執筆したコラムのご紹介、「実務に使用できる書式」の無料ダウンロードが可能です。ぜひご登録下さい。

顧問サービスのご案内

私たち「弁護士法人 長瀬総合事務所」は、企業法務や人事労務・労務管理等でお悩みの企業様を多数サポートしてきた実績とノウハウがあります。

私たちは、ただ紛争を解決するだけではなく、紛争を予防するとともに、より企業が発展するための制度設計を構築するサポートをすることこそが弁護士と法律事務所の役割であると自負しています。

私たちは、より多くの企業のお役に立つことができるよう、複数の費用体系にわけた顧問契約サービスを提供しています。

 

リーガルメディア企業法務TVのご案内

弁護士法人 長瀬総合法律事務所のYouTubeチャンネル「リーガルメディア企業法務TV」では、様々な分野の問題を弁護士が解説する動画を配信中です。興味を持たれた方は、ぜひご覧ください。

最新法務ニュースに登録する

この記事を読んだ方は
こんな記事も読んでいます

このカテゴリーの人気記事ランキング

モバイルバージョンを終了