相談例
当社は、運送会社・運送事業者としてさらに発展・成長させていきたいと考えています。これからの時代、運送会社・運送事業者として押さえておくべき視点は何でしょうか。
解説
運送業界の課題
重要な産業
運送業は、BtoB(企業向け)という視点で見た場合、国内物流の基幹的役割を果たしており、国内の産業・経済活動の基盤となる重要な産業です。
また、BtoC(個人向け)という視点で見ても、Amazonに代表されるEC(ネットを使用した販売サービス)の浸透に伴い、インターネット社会の進展に応じた物流サービスは不可欠のものとなっています。
このように、運送業は、企業にとっても個人にとっても欠かすことができない重要な基幹産業といえます。
厳しい労働環境
ですが、輸送産業を担う運送業界では、全産業平均と比べて、長時間労働・低賃金が常態化しており、「2割長く2割安い」職業とも指摘されています。運送業界を取り巻く労働環境は他業種と比して厳しい状況にあることを反映し、人手不足・労働者の高齢化が加速する傾向にあります。
様々な労働紛争
そして、厳しい労働環境にあることを反映してか、運送業界では労務紛争が少なくありません。
人手不足による長時間労働の常態化に起因する未払残業代請求や、過酷な労働環境に起因する過労死等の労働災害、採用難や離職率の高さに伴う労働契約の終了に関わるトラブル等、様々な場面に応じた労務紛争が見受けられます。
労働環境の改善と紛争の予防が不可欠
企業活動のみならず個人の生活においても基幹産業といえる運送業が持続的な成長を遂げるためには、労務環境を改善するとともに労使紛争を未然に防ぎ、より多くの労働者を惹きつける魅力的な職場を築いていくことが不可欠といえます。
相次ぐ重要な法改正の動き
一方、政府は「働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で『選択』できるようにするための改革」として「働き方改革」の実施を推進しています。
働き方改革は「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」の2つを大きな柱として設定しています。
運送業界において、時間外労働時間の上限規制に代表される「労働時間法制の見直し」や、同一労働同一賃金に代表される「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」は、いずれも労務管理上の大きな課題です。
また、このような働き方改革の流れを受けて、2019年には「改正貨物自動車運送事業法」が施行されました。さらに、2020年には、働き方改革関連諸法の施行が一層本格化するだけでなく、100年に1度といわれる民法の大改正も施行されました。
運送業界を取り巻く労務環境を改善していくことは、人手不足・高齢化を防ぐだけでなく、働き方改革関連諸法や改正民法等の法令を遵守し、コンプライアンス経営を確立して持続的な成長を遂げるためにも避けて通ることができません。
働き方改革関連諸法等に対応する意味
働き方改革は、「働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で『選択』できるようにするための改革」であり、本来望まれる理想的な労務環境を実現することを求めているものです。
そして、このような理想的な労務環境を実現するために必要な確固たる経営基盤を確立し、コンプライアンスを遵守できる体制を構築した企業に成長することが求められることでもあります。
働き方改革に代表される2020年以降の法改正は、これに対応できる企業と対応できない企業を選別するための指標とみることもできます。
ご相談のケースについて
運送業界は基幹産業である一方、「2割長く2割安い」と指摘されるように、労務環境は過酷な状況にあります。そのため、働き方改革関連諸法、改正貨物自動車運送事業法、改正民法の施行等に対応することが求められます。
働き方改革関連諸法等へ対応できるかどうかが、従業員のみならず顧客からも選ばれる企業の基準となります。
運送業向け 顧問サービスのご案内
私たち「弁護士法人 長瀬総合事務所」は、企業法務や人事労務・労務管理等でお悩みの運送会社・運送事業者を多数サポートしてきた実績とノウハウがあります。
私たちは、ただ紛争を解決するだけではなく、紛争を予防するとともに、より企業が発展するための制度設計を構築するサポートをすることこそが弁護士と法律事務所の役割であると自負しています。
私たちは、より多くの企業のお役に立つことができるよう、複数の費用体系にわけた顧問契約サービスを提供しています。
運送業のための書籍のご紹介
典型的な労働集約型産業である運送会社にとって、労務管理は大きな経営課題の一つです。
私たちは多数の運送会社との間で顧問契約を締結し、労務管理のサポートをしてきましたが、これまでに培った知見を整理した書籍を執筆しました。
働き方改革関連法、パワハラ防止法、民法改正、貨物自動車運送事業法改正に対応した内容となっています。労務管理に悩む運送会社やこれを支える士業の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
働き方改革関連法、パワハラ防止法、民法改正、 貨物自動車運送事業法改正に対応! 運送会社のための労務管理・働き方改革対応マニュアル 著:弁護士 長瀨 佑志(茨城県弁護士会所属) 2021年3月12日 発売 定価4,290円(本体3,900円) |
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