相談事例
当社ではまだ就業規則を作成していないのですが、就業規則を作成していないと色々と不都合があると聞いています。
就業規則を作成する場合の注意点を教えてください。
解説
就業規則とは
労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。
職場でのルールを定め、労使双方がそれを守ることで労働者が安心して働くことができ、労使間の無用のトラブルを防ぐことができるので、就業規則の役割は重要です。
就業規則の効力
就業規則は、法令や労働協約に反してはなりません。(労働基準法第92条)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効となります。(労働基準法第93条、労働契約法第12条)
無効となった部分は、就業規則で定める基準が適用されます。
作成・届出義務
「常時10人以上の労働者を使用する」場合、就業規則を定めて所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。(労働基準法89条)
「常時10人以上」とは、「常態として」10人以上の労働者を使用しているという意味であり、一時的に10人以上となる場合は該当しません。
就業規則の届出は、企業単位ではなく、事業場単位で行うことになります。したがって、同じ会社であっても、それぞれの事業場ごとに就業規則を作成して、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。
なお、作成・変更・届出義務に関する違反は、30万円以下の罰金に処せられます。(労働基準法120条1号)
就業規則の周知
作成した就業規則は、労働者の一人ひとりへの配付、労働者がいつでも見られるように職場の見やすい場所への掲示、備付け、あるいは電子媒体に記録し、それを常時モニター画面等で確認できるようにするといった方法により、労働者に周知しなければなりません。(労基法第106条第1項)
就業規則は、作成したり、過半数代表者から意見を聴取したりしただけでは効力は発生しないと解されています。就業規則の効力発生時期は、就業規則が何らかの方法によって労働者に周知された時期以降で、就業規則に施行期日が定められているときはその日、就業規則に施行期日が定められていないときは、通常は労働者に周知された日と解されています。
就業規則の作成・変更、届出の流れを整理すれば、以下のとおりです。
就業規則の記載事項
就業規則には、以下の事項を記載する必要があります。(労働基準法89条)
絶対的記載事項
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
- 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的記載事項
- 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
- 臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
- 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
- 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
- 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
- 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
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