はじめに
インターネットの普及により、個人や企業はSNSや掲示板、口コミサイトなどさまざまなオンライン上の場で自由に情報をやりとりできるようになりました。しかし、匿名性や拡散力が高いメディア環境では、誹謗中傷や虚偽情報の流布が容易に起こり得ます。その際、「投稿者が誰なのか」を突き止めないまま放置すると、被害が拡大するリスクが高まるのが現実です。
たとえば、企業が根拠のないデマを流されたり、個人が悪意のある中傷を繰り返し受けたりしても、匿名投稿であるため被害者は対処に苦慮します。そこで重要となるのが、「投稿者を特定する必要性」です。名誉回復や損害賠償の請求、再発防止のためには、加害者を特定して責任を追及する手段が欠かせません。
本稿では、インターネットの匿名投稿に対する「投稿者特定の必要性とメリット」を中心に解説します。SNSや掲示板の誹謗中傷被害を受けた際、なぜ投稿者を特定することが鍵となるのか、その手続きにはどのような意味があるのか、実際に得られるメリットは何かを、具体的に見ていきましょう。
Q&A
Q1:投稿者を特定しないまま削除依頼だけで済ませるのはダメなのですか?
投稿が削除されれば一時的に被害が止まる可能性はありますが、再度同じユーザーが別アカウントで誹謗中傷を続けるケースは多いです。投稿者を特定し、加害者に直接謝罪や賠償を求めることで再発防止に繋がります。
Q2:投稿者特定にはどのくらいの費用と時間がかかるのでしょうか?
数カ月程度の時間を要することもあるほか、費用は弁護士費用(着手金・成功報酬)や裁判所に支払う印紙代などが発生します。事案の複雑さや相手が海外在住かどうかによって変わるので、弁護士に見積もりを取ることが大切です。
Q3:投稿者が特定できたら、必ず損害賠償を取れるのですか?
損害賠償が認められるかは、投稿内容が名誉毀損や侮辱など違法と評価されるか、被害実態が証明できるか、投稿者に資力があるかなどによります。加害者特定だけで終わる場合もありますが、再発防止や謝罪を求める意味でも十分にメリットがあります。
Q4:法人や大企業でも投稿者特定する価値はあるのでしょうか?
企業としても、根拠のないデマや悪評が拡散されるとブランドイメージを毀損し、売上や取引先との信用が大きく揺らぎます。投稿者を特定し、法的責任を追及することで、デマ拡散を抑止し、企業の名誉を回復する効果が期待できます。
Q5:投稿者特定後、示談交渉でどのような結果が得られますか?
謝罪広告や賠償金の支払い、誹謗中傷の投稿を二度と行わないような約束を取り付けるなど、被害者の名誉回復と再発防止に繋がる結果が期待できます。示談に応じなければ裁判で最終判断を求めることもできます。
解説
投稿者特定の必要性
- 責任追及と再発防止
- 誹謗中傷やデマを削除するだけでは、同じ加害者が別アカウントで再度嫌がらせを続けるリスクあり。
- 投稿者を特定し、法的責任(損害賠償や刑事責任)を問うことで、加害者に対する強い抑止力を生む。
- 名誉回復と被害回復
- 企業や個人が虚偽情報で社会的評価を下げられた場合、投稿者が公に謝罪したり、法的に誤りを正す判決を得ることで名誉回復を図れる。
- 被害者自身も「誰が攻撃していたのか」を知ることで、精神的負担を軽減できる。
- 信頼回復と二次被害防止
- 特に企業では、加害者特定の事実が取引先や顧客に伝わることで「あの企業はきちんと対処する」という印象を与えられる。
- 他のユーザーが真似するのを防ぎ、二次・三次被害を抑える効果がある。
投稿者特定で得られるメリット
- 示談交渉・損害賠償請求が可能
- 加害者がわかれば、直接謝罪文や損害賠償を要求し、示談交渉で和解できる。
- 和解に応じない場合は、裁判を起こして慰謝料・営業損害などを請求可能。
- 抑止力・再発防止効果
- 「誹謗中傷をすれば法的責任を問われる」という事例を世間に示すことで、他の潜在的加害者への警告となる。
- 企業公式SNSでは、投稿者特定のニュースが広まると、アンチ活動をためらうユーザーが増える。
- 投稿削除や謝罪広告の実現
- 加害者に強制力を働かせることができ、誹謗中傷投稿の完全な削除や謝罪広告の掲載を要求しやすい。
- 担当者が感情的な交渉を避けられ、弁護士を通して冷静に合意を取り付けられる。
- 被害者の精神的救済
- 長期間、誰が攻撃しているかわからない状況は精神的ストレスが大きい。
- 投稿者を特定することで「正体不明の恐怖」から解放される心理的メリットがある。
投稿者特定を行う一般的な手順
- 証拠保全
- 対象となる投稿やアカウント情報をスクリーンショットなどで確保。
- 投稿のURLや日時、SNS運営会社、関係するウェブページを記録。
- 弁護士へ相談
- 違法性(名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害など)の有無や手続きの流れを確認。
- 費用見積りと進行スケジュールを打ち合わせ。
- 発信者情報開示請求の裁判手続き
- まずはSNS運営会社に対して仮処分や訴訟を提起し、投稿者のIPアドレスやメールアドレスなどを開示させる。
- 次にプロバイダや通信事業者に対してIPアドレスの契約者情報を開示させる。
- 加害者特定・示談交渉 or 裁判
- 開示された契約者(加害者)と直接交渉。誹謗中傷停止や謝罪、賠償などを求める。
- 示談不成立なら損害賠償訴訟などを起こし、最終的に判決を得る。
- 再発防止・必要に応じて刑事告訴
- 加害者が脅迫や悪質な行為をしていた場合、警察へ刑事告訴を行い、捜査を促すことも選択肢。
- 企業の場合、公式声明や広報活動を通じて「誹謗中傷には断固対処する」姿勢を示す。
弁護士に相談するメリット
専門知識と経験による効率化
投稿者特定には、SNS運営会社やプロバイダ責任制限法に基づく手続きなど専門的手順が必要。弁護士が手続きを代行すれば、書面不備や手順のミスを防ぎ、スムーズに進行可能。
削除依頼や損害賠償請求を同時に進められる
弁護士が間に入ることで、投稿削除を先行しながら加害者特定も進めたり、示談交渉で賠償と謝罪を得るなど、一貫した戦略を立てやすい。被害者は最小限の負担で手続きを行える。
交渉力と心理的安心
加害者が判明した場合、弁護士が代理人として交渉することで、被害者本人が直接対峙せずに済む。感情的な衝突を避け、合理的な合意を得やすい。また、法的措置の専門家がつくことで被害者の精神的苦痛を軽減できる。
再発防止策のアドバイス
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、誹謗中傷対策の他にもSNSポリシー策定や企業向けリスクマネジメントなどのサポートを提供。長期的に誹謗中傷を抑制し、安心してネットを活用できる環境づくりを行う。
まとめ
- 投稿者特定の必要性
- 責任追及や再発防止の要→ 削除だけでは根本解決にならない
- 名誉回復・被害回復→ 謝罪広告や賠償金で精神的救済
- 抑止力→ 模倣犯を防ぎ、企業や個人の信用を維持
- 投稿者特定で得られるメリット
-
- 示談交渉や損害賠償請求が可能
- 公式な謝罪や誤情報の訂正に繋げられる
- 心理的にも「加害者がわからない恐怖」から解放される
- 法的手続きの一般的な流れ
- 証拠保全・SNS運営会社への削除依頼
- 弁護士相談 → 発信者情報開示請求
- 加害者特定 → 示談交渉 or 裁判手続き
- 弁護士に相談するメリット
- 手続き・書面の専門知識を活用しスピーディーに進行
- 削除依頼や賠償請求を同時並行で対応
- 交渉力と再発防止策の提案により被害者を包括サポート
SNSでの誹謗中傷は、放置している間に拡散し続け、被害が大きくなる恐れがあります。「誰が投稿しているかわからない」と諦めず、専門家に相談し、投稿者特定を含む適切な法的手段をとることで、名誉回復や被害回復が可能となります。
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