Fintechと金融法‐ICOと法規制

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INDEX


はじめに

  1. ICOとは
  2. 資金決済法上の規制
  3. 金融商品取引法上の規制
  4. その他の法規制
  5. (参考)サンタルヌーICOと法規制

 はじめに

最近、国会や日経新聞でも“ICO”(Initial Coin Offering イニシャルコインオファリング)が取り上げられるようになってきましたが、“ICO”の中身について熟知されている方は多くはないかと思います。

“ICO”とは、端的には、スタートアップ企業が新しいトークン(デジタル通貨[1])を発行し、証券会社等の仲介者を通さずに、インターネット上で、直接、投資家からビットコインやイーサ等の仮想通貨建てで資金調達を行う手法のことをいいます。主に米国スタートアップ企業において流行している資金調達手法であり、ここ数年で調達金額や実施事例が急激に増加しています。

ICOは、株式公開(IPO)や社債の発行等の伝統的な資金調達方法と異なり、証券会社や証券取引所による審査を経ず、株式発行のように支配権が移転したり投資家に対する配当を支払ったりする必要もなく、また社債のように投資家に対する利息の支払い義務もなく、短時間で多額の資金調達を実現しうる新たな資金調達手法として、今後日本でも検討される可能性は十分にあります(本年7月には、ついに日本でもICOが実施されています[2])。

もっとも、新たな手法だけに、ICOに関する日本法上の法規制等については十分な議論が尽くされているとは言い難い状況です。

そこで、本コラムでは、ICOに係る日本法上の法規制等を分析することとします。

なお、ICOをはじめ、仮想通貨に関する法規制の議論は不透明かつスピーディーに展開しており、今後の法改正・解釈の変遷等により、本コラムにおける記載内容が変更される可能性があることにご留意ください。

[1] 後述のとおり、ICO実施企業の発行するトークンが、必ずしも資金決済法上の「仮想通貨」に該当するものではないことに注意が必要です。本ニュースレターでは、混乱を避けるため、新たに発行されるトークンのことを「デジタル通貨」と呼称しています。

[2] 「サンタルヌー」によるICO(http://www.belgianbeer.nagoya/ico/

POINT

  • ICOとは、新たなトークンを発行し、証券会社等を介さず、インターネットを通じて、直接、投資家からビットコイン等の仮想通貨建てで開発資金等を調達する、新たな資金調達手法
  • ICOが資金決済法の規制対象となるかは、ICOにより発行するトークンが資金決済法上の「仮想通貨」又は「前払式支払手段」に該当するかによる
    ▶ トークンが「仮想通貨」に該当する場合、発行体は「仮想通貨交換業者」として登録等が必要
    ▶ トークンが「前払式支払手段」に該当する場合、届出/登録等が必要
  • ビットコイン等の「仮想通貨」建てで資金調達をする場合、現状、金商法上のファンド(集団投資スキーム)には該当せず、規制対象外
  • (参考)サンタルヌーによるICOは、発行するトークンが自家型前払式支払手段に該当する可能性があるとともに、弁護士等の紹介サービスが非弁提携等に抵触しないよう留意要

 

 1. ICOとは

1. ICOの概要


ICOとは、Initial Coin Offeringの略称であり、一言で言えば、仮想通貨建てのIPO(Initial Public Offering、株式公開)に類似した資金調達手法です。ICOという呼称以外に、クラウドセール(crowdsale/crowd sale)、プリセール(presale)、IPO(Initial Public Offering)、ITO(Initial Token Offering)などと呼ばれることもあります。

ICOについては、特段、法律上の定義はありませんが、一般に、「新しいトークンを発行した上で、インターネットを通じてその将来的な利用方法を提示し、価格上昇を見込んだ投資家に対して(主としてビットコイン、イーサを対価とする)販売を行うことにより開発資金等の調達を行うこと」をいうものとされています。

ICOは、ここ数年、主に米国スタートアップ企業において利用され始めた新たな資金調達手法であり、2016年には約150億円相当がICOによって資金調達されています。また、2017年に入ってからは、既に約70社、合計約800億円超がICOによって調達されており、ICOによる最近の調達事例としてはたとえば以下のようなものがあります。

【ICOによる資金調達の実施例】

年月

実施企業

調達金額

2017年4月

Gnosis(米)

数分で10億円超

2017年5月

Brave Software(米)

30秒で40億円

2017年6月

Status(スイス)

300億円超

これに対して、伝統的な資金調達手法である株式の新規発行(IPO)による資金調達を最近東証で行った例としては、以下のものがあります。

【IPOによる資金調達の実施例】

年月

実施企業

調達金額

2017年4月

アセンテック

7.7億円超

2017年6月

ツナグ・ソリューションズ

10億円

2017年6月

SYSホールディングス

8.8億円

2017年6月

Fringe81

6.2億円超

このように、海外での調達事例との比較ではありますが、既にICOによる資金調達の規模感は、伝統的な資金調達手法であるIPOと比べても同等あるいはそれを凌駕しているものといえます。

 

2. ICOの特徴


前述のとおり、ICOとは、「新しいトークンを発行した上で、インターネットを通じてその将来的な利用方法を提示し、価格上昇を見込んだ投資家に対して(主としてビットコイン、イーサを対価とする)販売を行うことにより開発資金等の調達を行うこと」をいい、そのスキームは概要以下のとおりです。

【ICOのスキーム図】

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すなわち、ICOの特徴は、概要以下のとおり整理することが可能です。

【ICOの特徴】

  • インターネットを通じて、証券会社を介在せず、直接、投資家から資金調達が可能
  • 発行体はビットコイン、イーサ等の仮想通貨建てで資金を調達
  • 投資家への開示資料はWhite Paper程度
  • 証券取引所等による審査等がない
  • 発行体の支配権の移転なし
  • 投資家に対する配当や利息の支払い義務も生じない

ICOの語源ともなった、株式発行による伝統的な資金調達手法であるIPOと比較すると、以下のように整理することが可能です。

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このように、法令上の位置付けが明確で法定開示書類が整備され、証券会社が介在し、証券取引所による審査等を経る必要があるIPOと比べると、ICOによる資金調達は法令上の位置付けは不明確であり、法定開示書類はなく、証券会社や証券取引所によるチェックもないまま実施されるため、ICOに伴うリスクは基本的に投資家が負担することとなります。すなわち、仮に発行企業のプロジェクトが頓挫して予定していたデジタル通貨が発行されなかったり、調達された資金が別のプロジェクトに使用されたりしても、ICOに参加した投資家は、基本的には自己責任としてリスクを負担することとなります。

そのため、今年6月16日開催の国会財政金融委員会においても、日本におけるICOの可否及び法規制の有無が議論されています[1]

[1] http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0105/main.html (外部サイトへ)

 

 2. 資金決済法上の規制

ICOが資金決済法の規制対象となるかは、ICOにより発行するトークンが資金決済法上の「仮想通貨」(資金決済法2条5項)又は「前払式支払手段」(同法3条)に該当するかによります

【ICOと資金決済法上の規制】

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1. 「仮想通貨」該当性


① 「仮想通貨交換業者」の意義

第2条

1~6(略)

7 この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。

(1)仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
(2)前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
(3)その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。

8 この法律において「仮想通貨交換業者」とは、第63条の2の登録を受けた者をいう。

第63条の2

仮想通貨交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。 

 資金決済法上、「仮想通貨交換業」に該当する場合、仮想通貨交換業の登録を受ける必要があります(資金決済法2条7項、8項、63条の2)。

そして、「仮想通貨の売買」や「他の仮想通貨との交換」を行う場合が、「仮想通貨交換業」に該当するものとされています。したがって、「仮想通貨交換業」に該当するか否かは、ICOによって発行企業が新たに発行するトークンが、資金決済法上の「仮想通貨」に該当するかによることとなります。

 

② 「仮想通貨」の意義

それでは、ICOにより発行するトークンは、いかなる場合に「仮想通貨」(資金決済法2条5項1号・2号)に該当するのでしょうか。

この点、資金決済法上、「仮想通貨」は、1号仮想通貨と2号仮想通貨の2種類に分類されています。

【1号仮想通貨(資金決済法2条5項1号)】

物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの対価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。

 

【2号仮想通貨(資金決済法2条5項2号)】

不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 1号仮想通貨の典型例はビットコインであり、端的には、法定通貨と交換可能なデジタル通貨をいいます。1号仮想通貨該当性の判断に当たっては、とくに「不特定の者に対して使用でき」かつ「不特定の者を相手方として購入及び売却」を行うことが可能かが問題となります。

たとえば、加盟店等の特定の者に対してだけ使用できる電子マネーは、「不特定の者に対して使用でき」という要件を満たさず、1号仮想通貨には該当しません。また、MUFGコインのように、払い戻しが可能でユーザ間移動が可能な銀行内仮想通貨であっても、特定の銀行に預金を有する者に利用者が限られるため、「不特定の者に対して使用」可能という要件を満たさず、1号仮想通貨には該当しません。

2号仮想通貨とは、たとえば1号仮想通貨であるビットコインと相互に交換ができるデジタル通貨(イーサなど)を想定しており、この場合、イーサはたとえ1号仮想通貨に該当しないものであっても、2号仮想通貨には該当することとなります。すなわち、法定通貨と交換可能な1号仮想通貨との交換性を有するのであれば、脱法行為を防止するべく、1号仮想通貨と交換可能なデジタル通貨についても、間接的仮想通貨ないし2次的仮想通貨として規制対象に含める必要があります。

ただし、2号仮想通貨に該当するためには、1号仮想通貨と同じく、あくまで「不特定の者を相手方として・・・相互に交換を行うことができる」必要があることに注意が必要です。

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③ 「不特定」の意義

このように、1号仮想通貨・2号仮想通貨に該当するかは、「不特定」の要件の解釈によりますが、資金決済法上、「不特定」の要件の解釈は判然としません[1]。ちなみに、「不特定または多数」ですとか、「不特定多数」という用語は従前から多数使用されていましたが、「不特定」という用語自体は珍しいものと言えます。

仮想通貨に関するガイドライン[2](「仮想通貨ガイドライン」)では、以下のとおり、「不特定」の要件を満たす場合について、限定的に解釈されています

【1号仮想通貨における「不特定」の解釈】

法第2条第5項第1号に規定する仮想通貨(以下「1号仮想通貨」という。)の該当性に関して、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」ことを判断するに当たり、例えば、「発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか」、「発行者が使用可能な店舗等を管理していないか」等について、申請者から詳細な説明を求めることとする。

 

【2号仮想通貨における「不特定」の解釈】

法第2条第5項第2号に規定する仮想通貨の該当性に関して、「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる」ことを判断するに当たり、例えば、「発行者による制限なく、1号仮想通貨との交換を行うことができるか」、「1号仮想通貨との交換市場が存在するか」等について、申請者から詳細な説明を求めることとする。

以上の仮想通貨ガイドラインの記載に照らすと、ICOにおいて、ICOに申し込んだ一定の会員に対してのみトークンを販売し、かつ、一定の会員内でのみ売買できるなどとした場合、「不特定」の要件を満たさず、資金決済法上の「仮想通貨」には該当しないと判断されるものと思われます[3]。この場合、当該発行体によるICOは資金決済法の規制対象外となり、投資家保護が不十分となるおそれがあります。

もっとも、「不特定」の要件について緩やかに解釈すると、極端な話、1号仮想通貨であるビットコインで売買できさえすれば、すべからく2号仮想通貨に該当することとなる可能性があり、それはそれで問題となる可能性があります。たとえば、航空会社のマイルやオンラインゲームのゲーム内通貨もビットコインで売買できさえすれば、2号仮想通貨に該当し、発行企業は「仮想通貨交換業者」として登録義務が生じることとなるおそれがあります。

今後、日本でもICOが実施されるようになった場合、どのような場合に「不特定」の要件を満たすものとして「仮想通貨」に該当すると判断されるかは、いかなるトークンを、どのような態様で発行するか等の個別の事情に応じたケースバイケースの判断になるかと思われ、今後の事例及び議論の集積を待つ必要があります。

[1] 片岡義広「第3回 仮想通貨の規制法と法的課題(上)」(NBL No.1076)は、「『不特定』の者に対して」とは、識別不可能という意義での不特定ではなく、不特定ながらも、それを受け入れる誰に対してでも使用し得るものであることをいう、としています。その上で、「ビットコイン等の仮想通貨の使用を認める店舗等は、通常は、仮想通貨の使用が可能であることを表明はしているであろうから、識別可能という意味での特定性は有している。しかし、仮想通貨使用者と何らの契約関係にあるものではなく、一方的にその使用を認めれば足りるのであって、このような関係のことを法は「不特定の者に対して」使用することができるものとしている」としています。

[2] http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20161228-4/29.pdf (別窓が開きます)

[3] なお、どの時点で「不特定」の要件を判断するかも別途問題となります。すなわち、トークンの発行時点では特定の者の間でしか売買できないものの、将来、仮想通貨取引所に上場されて「不特定」の者の間で売買できるようになった場合、トークンの発行時点では「不特定」の要件を満たさないものの、上場時点で「不特定」の要件を満たしたものとして「仮想通貨」に該当すると判断すべきか、法文上明らかではありません。

 

2. 「前払式支払手段」該当性


① 「前払式支払手段」の要件

この点、「前払式支払手段」(資金決済法3条1項)とは、以下の3要件を満たすものをいいます。

①    金額・数量の財産的価値が証票等に記載・記録されること(価値の保存)
②    金額・数量に応じる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他のものであること(対価発行)
③    代価の弁済等に使用されること

ICOにより発行するトークンには、通常、独自の金額等が設定されているため、要件①は満たします。

また、ICOにより発行するトークンを消費することで一定のサービスを受けることができる場合、要件③も充足します。

要件②について、「対価」に現金だけでなく、ビットコイン等の仮想通貨も含まれるかが問題となりますが、「対価」とは、必ずしも現金に限られず、財産的価値があるものはすべて含まれるものと解されています[1]。そのため、ビットコイン等の仮想通貨建てでICOを行う場合であっても、「対価」を得て発行されるものであるとの要件を充足する可能性があるものと思われます。

[1] 「Q&A資金決済法・改正割賦販売法」32頁

 

② 自家型/第三者型前払式支払手段と規制の概要

トークンが「前払式支払手段」に該当する場合、当該トークンを誰に対して使用できるかによって、「自家型前払式支払手段」・「第三者型前払式支払手段」いずれに分類されるかが異なるとともに、規制の内容(厳格度)も異なります。

自家型前払式支払手段とは、発行者に対してだけ使用できる前払式支払手段をいいます(資金決済法3条4項)。たとえば、ICO実施企業が、自社の運営するサービス内でだけ利用できるトークンを発行する場合がこれに該当します。この場合、発行している前払式支払手段(トークン)の未使用残高(トークンの総発行額-総回収額)が3月末又は9月末において、1000万円を超えたときは、内閣総理大臣に対する届出が必要となります(資金決済法5条1項)。

第三者型前払式支払手段とは、発行者以外の第三者に対しても使用できる前払式支払手段をいいます(資金決済法3条5項)。具体的には、Suica等の電子マネーが該当します。第三者型前払式支払手段については、第三者に対しても利用できる性質上、規制が厳格化されており、発行前に内閣総理大臣の登録を受ける必要があります(資金決済法7条)。

ICOにより発行するトークンが自家型前払式支払手段又は第三者型前払式支払手段に該当する場合、いずれも以下の規制を受けることとなります。

【前払式支払手段と規制内容】

①    表示・情報提供義務

・発行者の名称等の一定の事項を表示

②    発行保証金制度

トークンの未使用残高が1000万円を超える場合、未使用残高の2分の1以上の金額を最寄りの供託所に供託

③    情報の安全管理義務

④    監督規定

・定期的に当局に報告書を提出等

したがって、ICOにより発行するトークンが特定の者の間でしか利用できず、「仮想通貨」に該当しない場合であっても、「前払式支払手段」に該当するときは、誰に対して利用できるかによって自家型/第三者型前払式支払手段として一定の規制を受ける可能性があることに注意が必要です。

 

 3. 金融商品取引法上の規制

ICOのように、投資家から出資を募り、その出資を用いて事業を行う場合、いわゆるファンド(集団投資スキーム)規制に抵触する可能性があります。すなわち、ファンドの持分の発行者が当該ファンドの投資家を募る行為は(自己募集)は、第二種金融商品取引業に該当するため、ICOがかかる自己募集に該当する場合、原則として発行体は第二種金融商品取引業者としての登録が必要となります(金商法28条2項1号、2条8項7号へ)。

集団投資スキームとは、①その法形式を問わず、②複数の者から事業のために出資又は財産の拠出を受け、③当該金銭等を充てて事業(出資対象事業)が行われ、④出資者・拠出者に当該出資対象事業から生じる収益の配当又は当該事業に係る財産の分配をするもののことをいいます。具体的には、金商法2条2項5号において、以下のとおり、(1)~(3)すべてを満たすものと定義されています。

(1)以下の権利その他の権利であること

① 民法上の組合契約に基づく権利
② 商法上の匿名組合契約に基づく権利
③ 投資事業有限責任組合契約に関する法律上の投資事業有限責任組合契約に基づく権利

④ 有限責任事業組合契約に関する法律上の有限責任事業組合契約に基づく権利

⑤ 社団法人の社員権

⑥    その他の権利

(2)当該権利を有する者が、出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(「出資対象事業」)から生ずる収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であること

(3)次のいずれにも該当しないこと(適用除外)

① 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利
② 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利
③ 保険業法上の保険契約等
④ その他

この点、要件(1)について、⑥「その他の権利」と規定されているとおり、ICO実施企業と出資者との関係が集団投資スキームに該当するかは、その法形式ではなく、実質を踏まえて判断されることとなります。したがって、ICO実施企業が、たとえ自社のウェブサイト上で出資者から出資を募る場合であっても、その実質を踏まえて「その他の権利」として集団投資スキームに該当すると評価される可能性があることには注意が必要です[1]

もっとも、要件(2)について、金商法上、有価証券とみなされ規制対象となるファンド(集団投資スキーム)の持分は、出資者が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む)を充てて行う出資対象事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利に限られていることに注意が必要です。すなわち、金銭に類するものとして政令で定められているのは「有価証券」、「為替手形」、「約束手形」等に限られており(金商法2条2項5号柱書・金商法施行令1条の3各号)、現状、ビットコイン等の「仮想通貨」は含まれていないため、出資者からビットコイン等で資金を調達しても要件(2)を満たさず、ファンド規制には抵触しないこととなります。ただし、ICOの態様等によっては、形式的にビットコイン等で出資を募ったとしても、実質的には金銭での出資と同等と評価され、ファンド規制が及ぶ場合もありうるように思われます。

また、「金銭に類するもの」を規定する金商法施行令1条の3は、金銭に類するものを機動的に追加できるようにする観点から、第5号において、「前各号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの」を規定しています。現時点では、そもそも当該内閣府令自体が規定されていませんが、日本でもICOが大々的に行われるようになり、出資者保護が必要となった場合、将来、同号に対応する内閣府令が新設され、ビットコイン等の仮想通貨で資金調達するICOについてもファンド規制が及ぶようになる可能性は否定できないように思われます。

[1] 詐欺により権利が仮想されているだけで契約上の権利が発生していない場合にも、契約の外観が集団投資スキーム持分の要件を満たしていれば足り、金商法2条2項5号を適用できる旨指摘されています(「金融商品取引法コンメンタール1」(2016年、株式会社商事法務)64頁)。

 

 4. その他の法規制

ICOそのものに対する規制ではありませんが、ICOに際して出資者に対する説明に虚偽があった場合には、民法上の詐欺取消(民法96条)や、信義則上の説明義務違反等が問題となる可能性があります。

また、出資者が個人等の消費者である場合、重要事項の不実告知等による取消の対象となる可能性があります(消費者契約法4条1項1号等)。

 

 5. (参考)サンタルヌーICOと法規制

報道によれば、本年7月、名古屋の飲食店「サンタルヌー」が、東京都内への出店を目的に、イーサリアム等建てでICOによる資金調達を実施しています[1](以下「サンタルヌーICO」といいます。)。

サンタルヌーが公表しているホワイトペーパー(訂正分含む。)によれば、サンタルヌーICOの概要は以下のとおりです。

  • サンタルヌーは、東京出店用の資金3000万円弱を調達するため、ETH等の仮想通貨による出資の対価としてトークン(SAT)を発行する
  • 「不特定」の者による出資を避けるべく、出資者について、Twitterでサンタルヌーをフォローしている又はフォローされている者に限定
  • SAT保有者は、以下の用途でSATを使用することができる
    ▶ 店舗での会計時に使用可(1SAT=5円、トークンの使用上限は会計の50%まで
    ▶ トークンのみで購入可能なグッズの販売(通販可能)
    ▶ 5000SAT以上の保有でプレオープンイベントへの招待
    ▶ 店舗内に記名するスペースを設け、3ETH以上の出資者にはオープン 3か月以内に記名する権利の提供
    ▶ 25000SAT保持者には、弁護士、税理士等の紹介、人材紹介、ビジネス斡旋等のマッチングサービスを提供
    ▶ 5万SAT以上保有で5%オフ

    ▶ 10万SAT以上保有で10%オフ
    ▶ 一定以上のSAT保有者のみ参加可能なイベントの企画
  • SATトークンは保有者同士で売買できる

このような仮想通貨建てのサンタルヌーICOについて、日本法上、いかなる法規制の対象となりうるか検討してみます。

[1] http://www.belgianbeer.nagoya/ico/ (外部サイトへ)

 

1. 「仮想通貨」該当性


上記のとおり、資金決済法上の1号仮想通貨に該当するためには、「不特定」の者に対して使用可能であり、かつ、「不特定」の者を相手方として購入及び売却できることが必要となります。

この点、サンタルヌーICOでは、出資者をTwitter上のフォロワー等に限定し、SATトークンはサンタルヌーの店舗でしか使用できないこととされており、仮想通貨ガイドラインでいう「発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されてい」る場合や、「発行者が使用可能な店舗等を管理してい」る場合に該当するものといえ、SATトークンは1号仮想通貨に該当しないものと思われます。

また、資金決済法上の2号仮想通貨に該当するためには、「不特定の者を相手方として・・・相互に交換を行うことができる」ことが必要となりますが、SATトークンは保有者同士では売買できるものの、少なくとも現時点では仮想通貨取引所に上場されているものではなく、ビットコイン等の1号仮想通貨との交換市場が存在するものではありませんので、2号仮想通貨にも該当しないものと思われます。

したがって、サンタルヌーICOにより発行されるSATトークンは1号仮想通貨、2号仮想通貨いずれにも該当せず、サンタルヌーは「仮想通貨交換業者」としての規制には服しないものと思われます。

 

2. 「前払式支払手段」該当性


SATトークンが「仮想通貨」に該当しないとしても、別途「前払式支払手段」に該当しないかは別途検討する必要があります。

上記のとおり、「前払式支払手段」とは、①金額・数量の財産的価値が証票等に記載・記録されること(価値の保存)、②金額・数量に応じる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他のものであること(対価発行)、③代価の弁済等に使用されること、の3要件を満たすものをいいます(資金決済法3条1項)。

この点、SATトークンには、財産的価値が記録されており(要件①)、店舗での会計時に1SAT=5円として代価の弁済に使用することが認められています(要件③)。また、「対価」には財産的価値があるものはすべて含まれると解されていることから、イーサリアム等の仮想通貨を対価として発行する場合であっても、要件②を充足するものと思われます。

したがって、SATトークンは、たとえ特定の者の間でしか利用できず資金決済法上の「仮想通貨」に該当しないとしても、「前払式支払手段」には該当する可能性が高いものと思われます。

なお、ホワイトペーパーによれば、SATトークンはサンタルヌー店舗でしか利用できないこととされており、規制の緩やかな「自家型前払式支払手段」(資金決済法3条4項)に該当し、サンタルヌーは「自家型発行者」に該当するものと思われます。

したがって、サンタルヌーは、基準日(毎年3月31日及び9月30日)において、最初にSATトークンの未使用残高が基準額である1000万円を超えるまでは届出義務等はありませんが、基準日において当該基準額を超えた場合、「前払式支払手段発行者」として、表示・情報提供義務や発行保証金の供託義務、情報の安全管理義務等の義務を負うこととなります。

 

3. その他(非弁提携等)


ホワイトペーパーだけではサービスの内容の詳細は不明ですが、サンタルヌーは、一定数以上のSATトークン保有者に対して、弁護士の紹介サービスを行うこととしていますが、非弁提携(弁護士法27条、72条)に抵触しないよう注意が必要です。

また、その他人材マッチングサービスについても、職業安定法等の業規制に抵触しないよう留意が必要となります。

 
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