相談事例

新たに友人とともに新規ビジネスを始めようと思い、会社の設立を検討しています。

当初は設立コストが安くて内部組織の設計も自由な合同会社形態を選択しようと考えていましたが、知人から「有限責任事業組合、いわゆるLLPも起業に向いている」といわれました。

有限責任事業組合について、概要を教えてください。

回答

有限責任事業組合は、合同会社と同様に出資者が有限責任しか負わず、会社組織も自由に設計できる組織形態ですが、合同会社と異なり法人格がありません。

そのため、法人と構成員に対して二重に課税されることがないという大きなメリットがありますが、一方で法人格がないため、事業の途中で株式会社へ組織変更することができないというデメリットもあります。

解説

有限責任事業組合(LLP)

有限責任事業組合(LLP: Limited Liability Partnership)は、合同会社と同様に有限責任と自由な内部自治を両立した組織形態であり、会社法上の会社ではなく、民法上の組合です。

合同会社との最大の違いは、法人格の有無にあります。合同会社には法人格がありますが、LLPには法人格がありません。

また、法人格の差異に起因して、課税関係も異なります。法人格のある合同会社はまず法人として課税され、さらに構成員にも所得税がかかることになりますが、LLPは法人格がないため、法人税がかからず構成員へ直接課税される「パス・スルー課税」が適用されます。

パス・スルー課税によれば、法人税が課税されず、出資者に直接課税されることから、LLPで生じた損益配分と、組合員自身が別の事業で生じた損益と損益通算できるため、全体の課税対象額を圧縮することが可能です。

たとえば、合同会社Xの代表社員AがB氏とLLPを設立し、当該LLPが決算で赤字を出した場合、当該LLPの損失分と合同会社XからA氏が受け取っている役員報酬から控除されている税金と通算できるため、結果的にA氏が支払う税金が減少することとなります。

さらに、合同会社は法人格があるので、途中で株式会社に組織変更することができますが、LLPの場合は株式会社への組織変更ができません。

株式会社、合同会社、有限責任事業組合の比較

株式会社、合同会社、LLPの相違点を比較すると次の表のようになります。

  株式会社 (譲渡制限会社を前提) 合同会社 有限責任事業組合
法人格の有無 あり あり なし
出資者の人数 1名以上 1名以上 2名以上
出資者の責任 間接有限責任 間接有限責任 間接有限責任
出資金 1円以上 1円以上 2円以上
機関設計 株主総会及び取締役1名以上が必要 制約なし 制約なし
課税 法人課税 (法人と社員に対する二重課税) 法人課税 パス・スルー課税 (構成員に課税)
決算公告 必要 不要 不要
利益配分 株式数に応じて配分 定款で自由に定められる 組合契約で自由に定められる
株式会社への組織変更 不可
社会的知名度 高い 低い 低い

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