資本業務提携②—第三者割当による資本業務提携

【質問】

(*本記事は、「資本業務提携①—資本業務提携の意義と手法」の続きです。)

当社X社は大手自動車メーカーへ自動車部品を納入している中小ゴム製品製造業者ですが、度重なる大手メーカーからのコスト削減要求のプレッシャーもあり、競業他社Y社との連携を強化すべく、業務提携を検討しています。

第三者割当による資本業務提携について教えてください。

 

【回答】

資本業務提携の手法は、①新株を発行し、対象会社の資金調達が可能となる第三者割当増資と業務提携を組み合わせる方法と、②対象会社の株主からの発行済株式の取得と業務提携を組み合わせる方法の2種類に大別することができます。

①第三者割当増資の方法としては、さらに(i)新株式の発行又は自己株式の処分と、(ii)転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行に分類することができます。

これらの手法を実施するに際しては、主に会社法、並びに上場株式等であれば金融商品取引法及び取引所規則等を遵守する必要があります。

 

【解説】

1. 資本業務提携の手法

資本業務提携①—資本業務提携の意義と手法でご説明したとおり、資本業務提携とは、端的には資本提携+業務提携をいい、業務提携の手法としては様々なものが考えられる一方、資本提携として主に利用されている手法は、概要2つに整理することができます。

すなわち、対象会社に資金調達ニーズがある場合には、①対象会社が資本参加者に対して新株を発行紙、資本参加者から株の対価を払い込んでもらう第三者割当が用いられます(第三者割当による資本増強型)。

これに対して、既存株主に対象会社の株式を売りたいニーズがある場合には、②資本参加者による既存株主からの対象会社株式の取得が用いられます(既存株式取得型)。

それぞれの手法について、具体的な方法及び主な法規制について、以下、概要を説明していきます。

 

2. 第三者割当による資本増強型の具体的な手法

第三者割当とは、会社が、「特定の」第三者に対して株式、新株予約権又は新株予約権付社債を割り当てることにより、資金調達を行う方法をいいます。

会社法上、株式の割当は、株主に対して割り当てる「株主割当て」(会社法202条)と、株主以外の第三者に割り当てる場合(会社法199条)に分けられるところ、後者のうち、「特定の」第三者に対してのみ行う株式の割当を「第三者割当」といいます。

なお、「不特定多数の」第三者に対して割り当てる場合は、一般に「公募増資」と呼ばれています。

第三者割当による資本増強型の資本業務提携を行う場合、具体的には以下の方法があります。

(i)新株発行又は自己株式の処分

(ii)転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行

新株予約権付社債とは、新株予約権+社債であり、両者を分離して譲渡することができないものをいい(会社法2条22号)、(ii)転換社債型新株予約権付社債とは、新株予約権を行使する場合には必ずその社債が消滅するものをいいます(Convertible Bondの頭文字をとって“CB”と呼ばれることが一般的です)。

(i)株式の第三者割当の場合、資本参加者は発行時に株の対価として金銭等を払い込む必要がありますが、(ii)CBの場合、新株予約権を行使するまでは、新株予約権自体の払込をすれば足り(無償である場合も多く見受けられます)、割当時から株式価値相当の払込資金を用意する必要はありません。

 

3. 第三者割当増資に係る主な法規制

上記第三者割当を行う場合、主な法規制としては以下のものが挙げられます。

なお、金商法・取引所規則に基づく規制は、基本的には有価証券報告書提出会社等の継続開示義務を負う上場会社株式を対象とする場合の規制ですので、詳細については割愛します。

  • 会社法
    ▶︎有利発行規制(会社法199条3項)
    ▶︎(公開会社の場合)特定引受人が生ずる場合(資本参加者に対して総株主の議決権の50%超を割り当てる場合)の特則(会社法206条の2第4項)
  • 金商法
    ▶︎(発行者である対象会社側の)発行開示規制(金商法4条1項等)
    ▶︎(引受人である資本参加者側の)引受人側の開示
     ・大量保有報告書・変更報告書の提出(金商法27条の23第1項、27条の25第1項)
     ・インサイダー取引規制(金商法166条1項)
  • 取引所規則
    ▶︎適時開示(東証有価証券上場規程402条1号等)
    ▶︎企業行動規範
     ・第三者割当に係る遵守事項(東証有価証券上場規程432条等)
     ・支配株主との重要な取引等に係る遵守事項(東証有価証券上場規程441条の2第1項1号、2項等)

会社法上、第三者割当を行う場合、その払込金額が引受人である資本参加者にとって「特に有利な金額」として株主総会特別決議が必要とならないか留意する必要があります(会社法199条3項)。

かかる有利発行に該当するにもかかわらず、株主総会特別決議を経ないで株式発行が行われようとする場合、既存株主による発行差し止めの対象となります。

また、支配権の異動(M&A)が生じるような第三者割当を行う場合、その重要性に鑑み取締役会のみで決定することにそぐわないとして、平成26年会社法改正により、公開会社において支配株主の異動を伴う第三者割当を行う場合の特則が設けられています。

具体的には、引受人(資本参加者)が総株主の議決権の50%超を取得する第三者割当増資を行う場合、会社は、払込期日の2週間前までに、株主に対して新たな支配株主となる当該引受人の名称等を通知・公告しなければなりません(会社法206条の2第1項)。

また、総株主の議決権の10分の1以上の株主が当該引受について反対通知をした場合には、原則として、株主総会の承認(普通決議)が必要となります(会社法206条の2第4項)。

ただし、会社を倒産の危機から救済するための資金注入目的のものであり、会社の財産状況が著しく悪化しており株主総会の承認を得る時間的余裕がない場合等には、反対通知があったとしても例外的に株主総会の承認は不要とされています(会社法206条の2第4項但書)。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

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