賃金②—育児休業とボーナス

【質問】

当社は男性社員が中心であったことから、これまでとくに育児休業を取得する社員はいませんでしたが、このたび女性社員の採用を開始したことに伴い、就業規則等を改訂して育児休業中の社員に対するボーナスに関する規定も見直すことにしました。

そこで、改訂案では、「育児休業を取得した日数を欠勤扱いとして、出勤率により賞与を減額する」内容に修正することを考えていますが、とくに問題はないでしょうか。

また、さらに踏み込んで、「育児休業中の社員に対しては一切賞与を支給しない」旨の規定はどうでしょうか。

【回答】

「育児休業を取得した日数を欠勤扱いとして、出勤率により賞与を減額する」との内容であれば、育児休業中の期間を欠勤扱いとして賞与を減額するものであり、厚労省指針、判例等に照らし、育児介護休業法上の不利益取扱いには該当せず、許容されるものと考えられます。

これに対して、「育児休業中の社員に対しては一切賞与を支給しない」旨の規定は、賞与対象期間中に出勤しているにもかかわらず、当該出勤を欠勤扱いすることとなるため、育児介護休業法上の不利益取扱いに該当し、許されないものと考えられます。

【解説】

1. 育児休業と不利益取扱いの禁止

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児介護休業法」といいます。)上、育児休業の取得とは社員に認められている権利であり、同法10条は、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」として、育児休業の申出をし、育児休業を取得したことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを規定しています。

したがって、育児休業を理由に賞与等の支給において不利益に取り扱う場合、育児介護休業法10条の不利益取扱いの禁止に抵触しないよう留意する必要があります。

2. 育児休業と賞与の支給

厚労省「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号。以下、「厚労省指針」といいます。)によれば、「・・・専ら当該育児休業等により労務を提供しなかった期間は働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な取扱いには該当しない」(厚労省指針第2第11号(3)ハ(イ))としており、育児休業を取得し、働かなかった日時について欠勤扱いとし、無給とすることは、ノーワーク・ノーペイの原則に従って適法とされています。

他方で、「一方、休業期間、休暇を取得した日数又は所定労働時間の短縮措置等の適用により現に短縮された時間の総和に相当する日数を超えて働かなかったものとして取り扱うことは、(2)チの「不利益な算定を行うこと」に該当すること。」(厚労省指針第2第11号(3)ハ(イ))とされていることから、育児休業による実際の欠勤日以上に働かなかったものとして取り扱うことは、育児介護休業法上の不利益取扱いに抵触することとなります。

最高裁判例も、支給対象期間中の出勤率が90%以上であることを賞与の条件とする条項に関して、使用者が出勤率の算定に当たり、8週間の産後休業や育児時間(勤務時間短縮)を欠勤日数に算入したため、賞与の支給を受けられなかった女性労働者の賞与請求に対して、賞与の比重が大きい点等も考慮し、産前産後休業を取得し又は育児のための勤務時間短縮措置を請求するとそれだけで賞与を受けられなくなってしまい、労基法、育児介護休業法の権利行使に対する事実上の抑止力は相当強く、権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとして、無効と判示しています(東朋学園事件(最高裁平成15年12月4日労判862号))。

したがって、育児休業中の期間を欠勤扱いとして賞与を減額することは適法ですが、賞与の支給時点で育児休業を取得している場合に一切賞与を取得しないと定めることは、賞与対象期間中に出勤しているにもかかわらず、当該出勤を欠勤扱いとすることとなるため、育児介護休業法上の不利益取扱いに該当し、許されないものと考えられます。

3. ご相談のケースについて

「育児休業を取得した日数を欠勤扱いとして、出勤率により賞与を減額する」との内容であれば、育児休業中の期間を欠勤扱いとして賞与を減額するものであり、厚労省指針、判例等に照らし、育児介護休業法上の不利益取扱いには該当せず、許容されるものと考えられます。

これに対して、「育児休業中の社員に対しては一切賞与を支給しない」旨の規定は、賞与対象期間中に出勤しているにもかかわらず、当該出勤を欠勤扱いすることとなるため、育児介護休業法上の不利益取扱いに該当し、許されないものと考えられます。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

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