著作権法—民間企業のプレスリリースの使用(無断転載禁止の表示)

【質問】

このたび、競業他社の動向を時系列に沿って網羅的に把握し、業界全体の趨勢を分析すべく、競業他社がインターネットに公表しているプレスリリースを公表年月日・企業ごとに分類して冊子形式でまとめることを検討しています。

各社作成に係るプレスリリースを冊子にまとめる上で、何か注意すべき点があるでしょうか。

また、各社が公表しているプレスリリースによっては、「無断転載禁止」といった表示があるものがありますが、何か影響があるでしょうか。

 

【回答】

民間企業である競業他社が作成しているプレスリリースについては、批評等をする上で必要な範囲を超えて全体をそのまま冊子にまとめる場合、著作権法上の適法な「引用」とはいえないと判断される可能性があります。

なお、これらプレスリリースに「無断転載禁止」といった表示がある場合であっても、著作権法上の「転載」「引用」の要件を満たす場合には、問題なく使用することができます。

 

【解説】

1. プレスリリースと著作物性

著作権法上、著作権の対象となる著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています(著作権法2条1項1号)。

したがって、人の思想又は感情が反映されていない、単なる事実そのもの(たとえば、株価や気温等のデータ等)や、事実の伝達に過ぎない雑報・時事の報道は、著作物とはいえず、著作権による保護の対象とはなりません(著作権法10条2項)。

そうすると、事実を中心に会社情報等を報道している多くの新聞記事についても、単なる事実の伝達に過ぎないとして、著作物に該当しないとも思えます。

もっとも、新聞記事の多くは事件の選択、情勢分析、評価、文章上の工夫等が加わっているため、ニュース記事の見出しそのものは別として、記事一般については思想・感情が表現されているものとして、著作物性が認められるものと考えられています(民青の告白事件(東京地裁昭和47年10月11日判タ289号))。

以上を前提とすると、企業や官公庁が作成・公表しているプレスリリースについても、新聞記事の場合と同様、その多くは事件の選択、情勢分析、評価、文章上の工夫等が加わっているため、プレスリリースの内容一般については思想・感情が表現されているものとして、著作物性が認められるものと思われます

 

2. 事業会社のプレスリリースと「引用」

官公庁等の公的機関の場合と異なり、民間企業である事業会社のプレスリリースについては、著作権法32条2項による「転載」をすることは認められておりません

そのため、当該事業会社の承認がない限り、当該プレスリリースを使用するためには、「引用」の要件を満たす必要があります(著作権法32条1項)。

同条項によれば、公表された著作物を引用して利用するためには、その引用が公正な慣行に合致し、かつ、報道・批評・研究等の引用目的上正当な範囲にあることが必要であり、また、判例上、「明瞭区別性」及び「主従関係」が認められることが必要とされています(モンタージュ写真事件第1次上告審(最高裁昭和55年3月28日))。なお、引用する場合には、出所の明示が必要となります(著作権法48条1項1号)。

「主従関係」の有無は、単に引用するものとされるものの分量の比較だけでなく、両者の著作物の性質、引用の目的・態様等、様々な要素を考慮して決定されるため、ケースバイケースの判断となります

したがって、事業会社が作成・公表しているプレスリリースの使用が「引用」として認められるかは個別具体的な案件ごとに判断する必要がありますが、とくに批評目的等もなく、単に各社が公表しているプレスリリースをまとめて冊子にする場合には、「主従関係」が認められず、適法な「引用」とはいえない可能性が高いと思われます。

 

3. 引用禁止・転載禁止の文言と「引用」

著作物によっては、「引用禁止」「転載禁止」といった記載がなされているものもありますが、このような一方的表示は、著作権法上は特段の法的意味はありません

したがって、「引用禁止」「転載禁止」といった記載がなされているプレスリリースであっても、著作権法上の転載、引用の要件を満たす場合には、引用・転載をする者は当該プレスリリースを適法に使用することができます。

 

4. ご相談のケースについて

民間企業である競業他社が作成しているプレスリリースについては、批評等をする上で必要な範囲を超えて全体をそのまま冊子にまとめる場合、著作権法上の適法な「引用」とはいえないと判断される可能性があります。

なお、これらプレスリリースに「無断転載禁止」といった表示がある場合であっても、著作権法上の「転載」「引用」の要件を満たす場合には、問題なく使用することができます。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。お問い合わせ

 
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