株主総会—書面投票制度と議決権行使の「棄権」の取扱い

【質問】

当社では株主総会における議決権行使の方法として書面投票制度を採用しており、各議案についての賛否の欄には、「賛成」「反対」の2種類のみ設けており、これまで各株主からはいずれかを記載した議決権行使書面を受け取っていました。

このたび、当社大株主から、議決権行使書面に「棄権」と記載された書面が送られてきました。

「棄権」している以上、株主総会に参加する意思もなかったものとして、定足数にも含める必要はないのでしょうか。

また、株主総会の現場でいわゆる動議がなされる場合もありますが、「棄権」した株主については動議について欠席したものとして扱ってよいでしょうか。

 

【回答】

会社法上、議決権行使書面に「棄権」と記載して議決権行使をした株主についても、株主総会に出席したものとして扱われるため、出席数議決権数に算入する必要があります。

また、動議のうち、休憩や質疑打ち切り等の手続的動議については、書面投票を行った株主は欠席したのとして取り扱う一方、役員選任議案に対する候補者の変更提案等の修正動議については、書面投票を行った株主も出席議決権には含め、賛成には含めないこととされています。

 

【解説】

1. 書面による議決権行使(書面投票制度)

会社は、株主が1000人以上いる場合には、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権行使できる旨を定めなければなりません(会社法298条2項)が、1000人未満であっても、自主的に株主総会に出席しない株主が書面により議決権を行使できる旨定めることができます(会社法298条1項3号。以下、「書面投票制度」といいます。)。

書面投票制度を採用した場合、会社は、招集通知に際して、株主に(i)株主総会参考書類及び(ii)議決権行使書面を交付する必要があります(会社法301条1項)。

そして、(ii)議決権行使書面には、議案ごとに、株主が賛否を記載する欄を設けなければならないこととされ(会社法施行規則66条1項1号)、別に「棄権」の欄を設けてもよいこととされています(同号括弧書)。

 

2. 動議と書面投票

株主総会においては、あらかじめ招集通知に記載された議題についての審議・採決が行われるだけでなく、株主総会の現場における株主の提案で審議・採決が行われる、いわゆる「動議」がなされる場合があります。

動議には、①総会運営・議事進行に関する手続的動議と、②総会の議題や議案に関する修正動議の2種類に分類されますが、このうち後者の修正動議は、議案提出権(会社法304条)に根拠を持ち、原則として株主総会で取り上げて審議・採決が必要となります(「付議」といいます。)

休憩や質疑打ち切り等の①手続的動議については、実際に出席していない株主に対して株主総会前にこれらの動議に関して意思決定する資料を与えられていないため、書面投票の内容に関わらず、欠席扱い(すなわち、出席数議決権数にも含めない)とされています。

これに対して、役員選任議案に対する候補者の変更提案等の②修正動議については、書面投票を行った株主を欠席扱いにすると、実際に出席しているわずかな株主によって決議されてしまうおそれがあるため、書面投票も出席議決権数には含めつつ、賛成には含めないこととされています。

動議の種類

書面投票の取扱い

手続的動議

欠席扱い(出席数議決権数に含めない)

修正動議(議題原案の内容を変更)

「棄権」扱い*(出席数議決権数には含めつつ、「賛成」には含めない=「反対」と同じ)

 

* 厳密には、「原案に賛成のものは修正案に反対、それ以外のものは棄権として扱う」という見解と、「すべてを棄権として扱う」という見解とが存在するものの、いずれの立場であっても、修正動議について書面投票は出席数議決権数には含め、賛成には含めないこととするため、決議の成否に違いはない。

 

3. ご相談のケースについて

ご相談のケースでは、「賛成」「反対」の欄しかないところ、議決権行使書面に「棄権」と記載された場合に該当しますが、かかる議決権行使をした株主についても、株主総会に出席したものとして扱われるため、出席議決権数に算入する必要があります。

また、動議のうち、休憩や質疑打ち切り等の手続的動議については、書面投票を行った株主は欠席したものとして取り扱う一方、役員選任議案に対する候補者の変更提案等の修正動議については、書面投票を行った株主も出席議決権数には含め、賛成には含めないこととされているため、修正動議については書面投票を行った株主についても出席数議決権数に含める必要があります。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

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