株主優待制度の法的問題点

【質問】

当社ではこれまで特に株主様に対する優待制度を実施してきませんでしたが、株主様の当社のROEや株主への利益還元政策に対する見方も年々厳しさを増してきており、株主様の満足を得るための一環として、新たに株主優待制度を取り入れることを検討しております。

当社は人気のプロ野球球団のオーナー会社の系列であるため、当該球団の試合の観戦チケットを一定数以上の株式を保有する株主様に対して抽選で付与することを検討していますが、会社法上留意すべき点があればご教示ください。

【回答】

株主優待制度は、①株主平等原則、②株主の権利行使に関する利益供与の禁止、③配当規制等に抵触しないよう留意する必要があります。

一般的には株主優待制度は禁止されているものではありませんが、自社事業のサービスの一環として社会通念上相当な範囲内で行うことが必要となります。

【解説】

1. 株主優待制度

株主優待制度とは、株主に対して会社の事業に関連する便益を付与する制度をいい、たとえば鉄道会社が一定数以上の株式を持つ株主に優待乗車券を付与したり、事業会社が自社製品の商品券を付与したりするものをいいます。

また、近年では株主優待の内容も多岐にわたっており、自社の系列のスポーツ団体の試合の観戦チケットを抽選で付与したり、図書カード等の換金性の高い商品を付与したりする例もあります。

かかる株主優待制度については、①株主平等原則に違反しないか、②株主の権利行使に関する利益供与の禁止に抵触しないか、③配当規制に抵触しないかが問題となります。

2. 株主平等原則との関係

株主平等原則とは、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならないとする原則です(会社法109条)。一定数以上の株式を有する株主に対する株主優待制度は、かかる株主平等原則に違反しないかが問題となりますが、結論としては、通常の株主優待制度であれば、以下の理由から株主平等原則に違反しないとされることが一般的です。

① 株主優待制度は営業上のサービスであること

② 軽微な差別に過ぎないこと

③ 各株式につき分子を1として所定の株式数を分母とする分数量の権利であるから、その分数量の間で平等であればよいこと

もっとも、これらの理由により正当化できない株主優待、具体的には恣意的に特定の株主を優待したり、軽微とはいえないような価値のある物品を一定数以上の株式を持つ株主に付与したりするような株主優待は、株主平等原則に違反する可能性があるといえます。

3. 株主の権利行使に関する利益供与の禁止との関係

会社は、株主の権利の行使に関して何人に対しても財産上の利益の供与をすることを禁じられています(会社法120条)。

株主に財産上の利益を供与する株主優待制度が同条の禁止に抵触しないかが問題となりますが、社会通念上許容される範囲であれば、同条の禁止対象ではないと解されています。

もっとも、鉄道会社が株主優待として交付する乗車券の枚数につき交付基準による算定を厳格に行わずに基準よりも多くの乗車券を交付したことについて、社会通念上許容された範囲内で適正に行われたものとはいえないとして同条に違反すると認めた裁判例があるとおり(高知地裁昭和62年9月30日判時1263号)、あくまで「社会通念上許容される範囲」であることが必要となります。

また、役員選任について現職取締役と対立する議案が株主から提出されている場合に、会社が議決権を行使した株主にQuoカード一枚(500円相当)を交付することは、同条の利益供与に該当するとした裁判例があるとおり(東京地裁平成19年12月6日判タ1258号)、株主優待の価値に関わらず、会社の意図・目的によっては、同条に抵触すると判断される可能性があります。

4. 配当規制との関係

株主に対する配当には分配可能額の制限等の配当規制が適用される(会社法454条以下)ところ、株主優待制度は現物配当に該当し、配当規制の対象とならないかが問題となります。

この点、会社に関連する事業に関する無料券等の交付を受けることは、株主権の内容になっていないこと、会社の事業上のサービスの一環にすぎないこと、及び経済的価値が必ずしも大きくないこと等を理由に、株主優待制度には厳格な株主平等原則が適用されず、そのような特徴を満たしている限り、現物配当には当たらないと解するのが一般的です。

ただし、特に会社が有する資産や自社のサービスではないものを無償で交付する場合には、会社財産の流出が不可避的であるため、社会的相当性が認められる場合を除き、現物配当に該当するという見解もあるため、株主優待の内容が自社事業に関連し、交付価値も過大でないことが必要となると思われます。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。

また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

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【参考文献】

江頭憲治郎「株式会社法第6版」(株式会社有斐閣)

 
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