企業秩序−在職中の競業避止義務違反と懲戒処分等

【質問】

当社は人材派遣業を営んでいますが、当社の営業部長Xらが、当社と同様の人材派遣会社を立ち上げるべく、新会社の設立準備をしていることが判明しました。

当社に在籍しながらライバル会社を設立しようとしたXらに対しては懲戒処分を下すとともに、退職金も0にしようと思いますが、認められるでしょうか。

【回答】

在職中の社員に対する競業避止義務が就業規則等で懲戒事由として規定されているのであれば、Xらに対して懲戒処分を下すことは可能です。

もっとも、退職金を0とすることについては、就業規則等に競業避止義務違反の場合に退職金を支給しない旨の規定があったとしても、必ずしも文言どおり不支給とすることが認められるとは限らないことに注意が必要です。

【解説】

1. 競業避止義務

競業避止義務とは、社員が会社と競合する企業に就職したり、自ら競合する事業を行わない旨の義務をいいます。

労働契約における信義誠実義務(労働契約法3条4項)に基づく付随義務として、一定の範囲で競業避止義務が認められています。

もっとも、競業避止義務は、社員にとっては憲法で保障された職業選択の自由に対する制約ですから、無制限に認められるものではありません。

2. 在職中の競業避止義務

社員が、労働契約が存続している在職中は、使用者の利益に著しく反する競業行為を差し控える義務があるとされています。

もっとも、具体的にどのような行為が競業避止義務に抵触するかはケーズバイケースであり、たとえば、在職中から競業会社の設立準備を行ったり、引き抜き行為を積極的に行ったり、競業会社に秘密情報を漏洩する等、会社の利益を著しく害する悪質な行為については、競業避止義務違反として懲戒処分の対象となったり、退職金の不支給・減額事由とされています(日本コンベンションサービス(損害賠償)事件(最高裁平成12年6月16日労判784号))。

3. 競業避止義務違反と懲戒処分

このように、在職中の社員に対する競業禁止規定が懲戒事由として定められた場合には、かかる競業避止義務に違反した社員に対する懲戒処分の効力が認められています(キング商事事件(大阪地裁平成11年5月26日労判761号))。

4. 競業避止義務違反と退職金の不支給

また、社員の退職後、競業をすることを防ぐために、就業規則で同業他社に転職した場合に退職金の不支給・減額を規定している会社が見受けられます。

かかる退職金不支給・減額に関する就業規則等がない場合、退職金の不支給・減額は認められないと解されていますが、かかる就業規則等があったとしても、必ずしも文言どおり不支給・減額が認められるとは限らないことに注意が必要です。

具体的には、裁判例において、退職後6ヶ月以内に同業他社に転職した場合には退職金を支給しない旨の就業規則の規定は、退職従業員に継続した労働の対象である退職金を失わせることが相当であると考えられるような顕著な背信性がある場合に限って有効とされています(中部日本広告社事件(名古屋高裁平成2年8月31日労判569号))。

このように、形式的に就業規則等の要件に抵触していたとしても、退職金の不支給が認められない場合があり得ることに注意が必要です。

 

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

お問い合わせ

 
顧問契約のご案内
 

ページの上部へ戻る